サステナ情報の開示・保証、上場企業に義務付けへ 鈴木金融相、具体的あり方を金融審に諮問 金商法改正視野に基準・制度導入

金融庁はこのほど、気候変動対応などサステナビリティ情報の開示と保証を上場企業に義務付ける方針を固め、鈴木俊一金融担当相が19日、その具体的なあり方を金融審議会(首相の諮問機関)に諮問した。金融庁が同日開かれた金融審の総会および金融分科会の合同会合で方針を説明した。金融審は今後、3月に有識者ワーキンググループ(WG)を新設し、金融商品取引法の改正を視野に、開示基準や保証制度の導入に向けた検討を開始する。

企業のサステナビリティ情報の開示については、2023年3月期から有価証券報告書に「記載欄」を新設することで開始されたものの、その具体的な基準はないのが現状。そのため、今後、具体的基準に準拠した開示が、比較可能性の向上など投資家に有用な情報を提供する観点から重要となっている。

開示基準については、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が23年6月に、全般的要求事項と気候関連開示の2つの国際基準を最終化している。それを踏まえ、日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が国内における具体的な開示基準を開発中であり、24年3月に公開草案を公表し、同年度中に確定基準を公表する予定となっている。

この国内基準の適用対象について、金融審のディスクロージャーWGが22年12月にまとめた報告書では、企業によって社会全体へのインパクトが異なることやさまざまな業態があること、企業負担の観点、欧米では企業規模に応じた段階的な適用が示されていると指摘。これらを踏まえ、日本では最終的に全ての有価証券報告書提出企業が必要なサステナビリティ情報を開示することを目標としつつ、今後、円滑な導入の方策を検討するよう提言していた。

この提言を踏まえ、金融庁では、プライム上場企業などグローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業から始めることが考えられるなか、公開草案の公表に際し、適用の具体的な対象や時期を検討することで適切な議論が行われ、企業で開示基準の適用に向けた準備が進むことが考えられると指摘。これらを含め、有価証券報告書における法定開示への取り込みを金融審WGで検討していく考え。

なお、欧州では24年度から順次、サステナビリティ情報の開示を開始し、欧州域外にも28年度から適用を開始する予定。米国などでも今後、開示制度の導入が順次、進められていく見込みとなっている。

一方、投資家からはサステナビリティ情報の信頼性の確保を望む声があり、国際的にも保証のあり方の議論が進んでいる。具体的には、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が23年8月に新基準の公開草案を公表しており、24年9月に最終化する予定。また、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が24年1月に倫理規則改訂の公開草案を公表しており、同年12月に最終化する予定となっている。

サステナビリティ情報の第三者保証については、これらの国際動向も踏まえ、その担い手や保証の基準・範囲・水準、制度整備などの議論が必要であり、金融審WGで具体的に検討していく考え。