エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」+  東日本大震災から14年(3)

蛍光管を買いだめしても無駄

北海道稚内市では女性議員が市立病院の勉強会を企画してくれている。昨年2月に出された自治体向けの環境省、経産省の事務連絡では、「LED化が間に合わない場合には、蛍光管を買い溜めておくとよい」という記載箇所があり、それを鵜呑みにして蛍光管をかき集めようとしている自治体が出てきている。政府の欺瞞でもあるが、先の「あかり未来計画」の唯一の成果は2019年に蛍光灯の安定器を製造終了してしまったことである。蛍光灯は安定器と蛍光管で点灯する。もう作ることをやめた安定器の寿命が来ればLEDにせざるを得ないのだから、蛍光管を買いだめしておいても無駄なのである。

蛍光灯の裏側に付いている安定器の寿命がいつ来るかはわからない。古い建物であれば、もうあちこちの安定器が切れ始めていても仕方がないので、1台ずつ定価でLEDにしているというのが実情だろう。

この安定器の寿命とそれに対するLED照明の供給だけでも大変な問題であったところに、あと2年半で蛍光管もなくなるという強制終了が宣言されたのである。安定器が切れた時にすぐにLEDが手に入るならば問題はない。ただし、トランプ大統領がウクライナに求めているレアアースの1つに、昨年12月に中国から輸出禁止されているLED照明の原料となるガリウムがあることは間違いない。資源戦争とはこれほど深刻なものなのである。

 

地下鉄が止まる

東京では羽田空港からモノレールに乗り、地下鉄に乗り換えホテルまで歩いたが、モノレール駅もまだ蛍光灯がたくさんあり、地下鉄銀座線では地下道のほとんどが蛍光灯だった。それどころか、いまだに地下鉄の車内の照明も蛍光管のままの車両がある。地下鉄銀座線三越前ではコンパクト蛍光灯もたくさん使われており、これは来年12月に生産が終了する。東京都は今年と来年ですべての地下鉄の蛍光管をLED管に変えてしまわないと地下鉄が使えなくなるかもしれないのである。札幌市の札幌駅から大通りまでの地下歩行空間「チカホ」もすべてコンパクト蛍光灯である。「あかり」の消えた地下街と言うのは洒落にもならない。

このように、全国の病院、学校、トンネル、地下鉄すべての施設を調査して優先的にLED化の予算をつけなくてはならない。日本は2312月に国際会議で決まっていたものを、原子力再稼働計画との兼ね合いで閣議決定まで1年かけてしまった時間のロスを取り戻さなければならない。

民間企業も「あかり」がなければ商売できないのだから、全国で順番待ちの行列ができる前に今すぐ見積もりを取って、値上がりや資材不足の前に工事を発注すべきである。病院や学校だけでなく、特に事務所ビルを不動産物件として持つ企業は「あかり」のつかない物件は売ることも入居者募集もできなくなるのだから、一刻も早く手配しなくてはならない。電気料金削減とCO2削減のためのLED化が停電を防ぐための緊急事態になってしまった。

 

*当社では、特許技術のAI図形認証プログラムを使った試算見積もりを無償で行っている。何年で省エネ投資回収できるか、リースが活用できれば持ち出しがなく取り組みできるか。遠慮なくご相談いただきたい。

越智経歴