エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」+ 東日本大震災から14年(2)
津波対策と停電対策
世界戦争や感染災害とは違い、自然災害には解決策がある。
震災と津波については、これまでも何回か提言しているが、これからさらなる巨大な津波が8割を超える確率で確実に来て、数十万人を超える桁の死亡者が出ると想定されている。そうした中では、なによりも救命胴衣の備蓄をすぐに進めてほしい。
津波被害想定地域の学校や介護施設、各家庭に救命胴衣を用意しておき、津波警報が出たときにはそれを着装して逃げる。ライフジャケットの裏側から固定紐を股を
潜らせて前に回してセットする。それだけで波に飲まれても海で漂うことになっても、命が救われる可能性がはるかに高まる。激流でどこかに打ちつけられて命を失っても遺体は見つけてもらえる。
マスクをすることで感染しないと信じているならば、津波が来るのにはライフジャケットを用意すべきである。北海道大学の実験では現役の学生が全速力で走っても、津波タワーまで逃げ遅れるシミュレーションがある。日頃、100メートルも走らない私たち
や子供たち、お年寄りは必ず津波に飲み込まれることを前提とすべきである。こんな
人たちの相当数が生き延びられる。生き延びる可能性が生まれる。津波が起きてからでは遅い。政府・自治体や議会では少しずつでも実行していただきたい。
また、能登半島地震でも豪雨災害でも必ず発生する停電については、車から電気を取ることをお勧めしている。今トヨタ車を始め多くのメーカーがハイブリッド車に1500ワットコンセントを標準装備している。1500ワットというのは小さな住宅、ワンルームマンションと同じ容量で、自宅にコンセント付きのハイブリッドカーがあればそこから電気を引けば良いのである。
これは北見市のマイナス15度の極寒期の避難所宿泊実験でも実証したが、1500ワットコンセントから電気毛布60枚を供給することができた。もちろん、LED照明やテレビ、パソコン、携帯電話の充電にも充分対応できる。
危機管理を理解しない公務員の中には、アイドリングストップ条例に反するとか、タコ足配線は危険などできない理由を並べる輩もいるが、前述のライフジャケットですらエビデンスがないとか、政府の規定にないとかいう愚かな人間が防災担当をやっている自治体もあるが、命のかかった議論のなかでは無視してほしい。
ただし、車から電気を取るにあたっては、避難所には、医療機器を持って避難してくる人たちもいるので、電圧低下による事故を防ぐため、電流制限装置付きのコードリールコンセントを準備すべきである。私の会社では、この活動の普及のために、安心給電キットを避難所に1台ずつ寄贈する活動を続けている。公用車をコンセント付きハイブリッドカーに変えていくことも大事だが、そもそも避難所に車で逃げてくるかたの1台だけお借りすれば、停電問題は解決できるのである。
また、避難所の感染対策についても、パナソニックが空間に次亜塩素酸水を噴霧することで85%の菌を消滅させ、99.9%の付着菌を無くしたという実験結果を発表している。
灯りを護る
以前取り上げた「あかり未来計画」が、水銀水俣条約という国際条約によって実現することになった。2027年には蛍光管が強制的に製造禁止となることが昨年12月に石破内閣で閣議決定された。蛍光管の中に微量に含まれる水銀をなくすという目的と、蛍光管を全てLED化にしなくてはならないという膨大な省エネ効果を考えると、歓迎すべき決定ではある。
しかし、先月決定した第7次エネルギー基本計画のシナリオはそうした事態に逆行する点がある。発電所数10基分にも当たる省エネがどう実現されていくのか。締め切りは切られたが、その具体的な供給計画も、資金計画も補助対策も考えられていない。
先週、沖縄から東京、札幌へと帰ってくる際、この問題について多くの人と語り合った。特に2月の議会が始まったことで、国会議員、市会議員など問題意識を持たれている方々が増えてきた。
沖縄県那覇市の山川典二議員は、予算委員会で蛍光管型LEDを点灯し、沖縄の明かりを守るための早期の対策を求めた。全国で一斉に始まるLEDの発注の順番待ちが沖縄まで届くのか、特に離島の明かりをどうやって守るのか。地域の最優先の課題として、沖縄の灯りを護る超党派議員連盟を結成する委員長に就任していただいた。
東京都でも、この首都機能を脅かす問題を議会や知事に提言していく動きが起きている。もし東京の全ての公共機関が一斉にLED化の発注を始めると、メーカーの受注生産の順番待ちがどれほど長い行列になることか。
メーカーでは受注生産の時期は明言できないが、順番は必ず守ると言っている。逆に言うと、発注の順番が2000番になると1999番までの製造と発送が終わるまでは手元に届かないということである。
昔、「あかり未来計画」と同時期に閣議決定された新エネルギー普及のための「FIT」では1キロワット48円の権利を取得するために、東京電力に8000件もの申請の行列ができたという。この時の処理に何年かかったか? 太陽光は利権の話だったが、LEDが数年待ちになっては社会がもたない。(次回は、3月24日配信予定)