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エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」 ~ 夢のエネルギー原子力(5)

照明のLED化で原発がいらなくなる

今回のエネルギー基本計画案は、AIの進展によるデータセンターの稼働爆増と半導体工場の電力消費量の激増という数字的根拠を示さない電力危機論で原子力を再稼働させるシナリオですので、ここに照明のLED化で省エネすれば原子力はいらないという議論は邪魔だったのです。

20113月の東日本大震災で福島原発が爆発し、日本中の原発が停まり未曾有の電力危機が起きたとき、時の菅政権は全ての照明をLED化すれば原子力がなくても日本経済は復興できると「あかり未来計画」を閣議決定しました。

いま13年の時を経て、国際条約という外圧と中国の資源戦略によって現実に全ての照明がLED化されます。仮に40ワットの蛍光管3億本が11ワットの蛍光管型LEDに交換されると、安定器の消費電力も含めておよそ1000万キロワットの電力が削減されます。火力発電所、もしくは原子力発電所10基が不要になります。もしも10億本の蛍光管がLED化されていないとしたならば、30基の発電所を停止できるのです。引退された菅元総理大臣の最も評価されるべき成果になったのかもしれません。

これは大変な脱炭素政策であり、地球温暖化防止の現実的な切り札です。この事実と目の前にある政策課題をエネルギー基本計画に盛り込まないでいること自体が異様なことなのです。

 

サプライチェーンが破断する前に

照明メーカーは19年に安定器の製造を終了し、後は安定器の寿命が来た順に自然にLEDに変えざるを得ない状況をつくりました。岸田政権では30年を100 LED化の目標年としてカーボンニュートラル政策を定めました。

ロシアのウクライナ侵略により高騰した電気料金の対策としてもLED化は進みましたが、いま安定器がもう手に入らない中で27年で蛍光管までが製造終了するという状況を作られてしまっては、LED照明の供給が間に合うか国の灯りを護れるかが社会経済を左右していきます。

半導体不足、電材、建材の不足、マスク、ワクチン、咳止め、麻酔薬不足、さらには主食の米不足まで起きる日本の脆弱なサプライチェーンにおいてはLED照明資材が全国からの発注で一気に蒸発してしまうことも充分考えられます。さらには中国が発光ダイオードの原料となるガリウムを米国に輸出禁止したわけですから、どう考えても経済安全保障上の緊急事態なのです。

危機管理の論稿になってしまいましたが、279月のメーカー生産終了まで「まだ2年半あるさ」と考えずに、照明の資材不足と高騰が起こる前に今すぐに手立てを尽くしてください。政府機関や自治体が4月の新年度を迎えると一斉に大量の入札と発注が始まります。

アイリスオーヤマのテレビコマーシャルで戸惑っていた民間企業は、政府の閣議決定でこの事実を知りました。民間も動き出しています。政府は閣議決定したとはいえ、まだ何の対策もとっていません。多分、年度末の補正予算や6月の骨太方針に何らかの予算が盛り込まれるとは思いますが、それをのんびりと待っているとLED資材の高騰と品不足が間違いなく起こります。この中国発の大津波とも言える非常事態に対応するには一刻も早く避難すること、つまり1日も早くLED化を終わらせてしまうことしかないのです。(次回は、210日配信予定)

*今すぐにLED化の見積もりをして工事発注してください。「あかりみらい」は一般社団法人日本の灯りを護る会の事務局企業としてもお手伝いいたします。ご遠慮なくお問い合わせください。あかりみらい_越智文雄氏

越智文雄:㈱あかりみらい代表取締役。
北海道大学卒業後、北海道電力入社。電
気事業連合会企画部副部長、北海道洞爺
湖サミット道民会議事務局次長、北海道
経済同友会などを歴任。電力業界で初代
の危機管理担当室長の経験から自治体・
企業へのアドバイザーとして活躍。環境
・エネルギー問題の専門家。(一社)日
本の灯りを護る会代表、(一社)次亜塩
素酸水溶液普及促進会議代表理事、日本
除菌連合の会長を務める。札幌なにかが
できる経済人ネットワーク主宰。