「新たな成長」導くグリーン経済など 次期環境基本計画で6重点戦略 中環審部会が報告案、来年4月に閣議決定へ
中央環境審議会(環境相の諮問機関)の総合政策部会(部会長=髙村ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授)は2日、次期の第6次環境基本計画(2024~30年)に向けた中間取りまとめの案を、同日、東京都内で開いた会合に示した。第1次の計画策定から30年の節目を迎えるもので、その重点戦略に、「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築や、自然資本を軸とした国土のストックとしての価値の向上など計6つを掲げている。各戦略の具体的施策などは23年度の後半に提示するとしている。環境省では今後、24年2月頃に中環審答申を得て、同年4月頃の閣議決定を目指している。(関連記事3面)
現行の第5次環境基本計画が策定された18年当時と比べ、世界情勢や環境問題を取り巻く社会経済の状況は大きく変化している。そうした中で、日本はカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブの同時達成と環境・経済・社会の統合的向上を実現するため、30年および50年の中長期目標の達成に向けた取り組みを進める必要がある。
そのため、環境省は22年12月、中環審での本格審議に先立ち、第6次環境基本計画の策定に向けた2つの有識者検討会を設置。環境・社会・経済面における過去30年の振り返りと現状・課題認識の下、新型コロナウイルスの世界的まん延や地政学的リスク、またGXの進展等の新たな状況を踏まえ、循環と共生の概念整理や統合的アプローチの重要性をはじめ、「新たな成長」のイメージやWell-beingと環境(自然資本)の関係、地域循環共生圏の実績・課題および今後の方向性、さらに国際情勢の変化と環境を通じた国際戦略などについて検討してきた。
今回の中環審総合政策部会の中間取りまとめ案には、これら両検討会が23年4月にまとめた成果が反映されている。
それによると、第6次環境基本計画の6つの重点戦略として、①「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築②自然資本を軸とした国土のストックとしての価値の向上③環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場としての地域づくり④「Well-being/高い生活の質」を実感できる安全・安心、かつ、健康で心豊かな暮らしの実現⑤「新たな成長」を支える科学技術・イノベーションの開発・実証と社会実装⑥環境を軸とした国益と人類の福祉に貢献する戦略的な外交・国際協調の推進――を掲げている。
このうち、①では、経済活動について、持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムを構築し、環境価値への適切な評価や、自然資本とそれを維持・回復・充実させる資本への長期的な視野に基づく投資を促すなど「新たな成長」を導いていくとしている。
②では、経済社会活動の基盤である国土を持続可能なものにしていくほか、自然資本とそれを維持・回復・充実させる資本を拡充することにより、国土のストックとしての価値を向上させていくとしている。
③では、コミュニティの基盤である地域について、地域資源を活用した持続可能な地域づくりを通じて地域の経済・社会的課題の解決に結びつけ、環境・経済・社会の統合的向上を実践・実装していくとしている。