環境法のうらよみ(1) iメソッドフォーラム 石渡 正佳
廃棄物処理法あるいは廃掃法と略称される法律の正式な名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という。この法律名にある「清掃」は法律の本条には一度も登場してこない。したがって、清掃は法律用語ではない。市町村が設置した一般廃棄物処理施設を「清掃工場」、一般廃棄物処理業を「清掃業」と呼ぶこともあるが、これも法律には出てこない言葉である。廃棄物処理法は1970年に清掃法を廃止して制定された。しかし、廃止された清掃法にも清掃工場や清掃業は出てこない。
その代わり清掃法には次のような条文がある。
- 清掃法
- (公共の清掃施設の設置)
- 第九条 市町村は、特別清掃地域内の必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。
- (大掃除の実施)
- 第十六条 建物の占有者は、建物内を全般にわたつて清潔にするため、毎年一回以上、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。
公共の清掃施設とは清掃工場ではなく公衆便所と公衆用ごみ容器のことであり、清掃とはお大掃除のことだったようである。これに相当する条文は廃棄物処理法にも生き残っている。
- 廃棄物処理法(清潔の保持)
- 第五条
- 3 建物の占有者は、建物内を全般にわたつて清潔にするため、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。
- 6 市町村は、必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。
廃棄物処理法からは消えてしまった清掃だが、他の法律には登場する。それは災害対策基本法である。
- 災害対策基本法(災害応急対策及びその実施責任)
- 第五十条 災害応急対策は、次に掲げる事項について、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に災害の発生を防御し、又は応急的救助を行う等災害の拡大を防止するために行うものとする。
- 六 廃棄物の処理及び清掃、防疫その他の生活環境の保全及び公衆衛生に関する事項
このように災害対策基本法において、清掃が法律用語として鮮やかに復活している。この場合の清掃は、災害で散らかってしまった廃棄物を大掃除するという程度の意味になるのであろうが、消えた清掃が見つかってほっとする思いである。
以上のことから、廃掃法とは、廃棄物の処理及び大掃除に関する法律ということになるようである。
