エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」 ~ 夢のエネルギー原子力(3)
空調分野での業界利権
また、こちらも業界の利権陰謀だが、現在空調に使われている代替フロンガスも世界では最新の自然冷媒ガスが採用されるようになって、クーラーの使用電力も30%から50%の省エネが可能になっている。日本ではD社やP社が一世代前のフロンガスを大量に在庫したことによって在庫のガスがなくなるまではと、この省エネ型冷媒ガスへの転換を妨害しているという。ここ数年の猛暑でへたってしまったクーラーを交換するにも予算がなく、アスベスト工事の規制が天井工事を困難にしている。
この解決策として室外機の冷媒ガスを新世代のグリーン冷媒に変えることで、大きな投資もなく、冷房能力が回復しクーラーの寿命も伸びる。LEDと同じで大幅な省エネによる電気料金削減分で分割支払いできるというのだから、今すぐ取り掛かれる省エネ投資である。これをやろうとすると、某社から「このガスは火が出る、このガスに入れ替えるならばクーラー本体の補修はしない」と妨害が入るので、日本では空調分野の革命的省エネが封じられているという。ガラパゴス規格である「丸ごと交換」を進めるために「蛍光管タイプのLEDは火が出る」というデマを、消防庁を使って全国に流した某業界と同じデマ工作である。それでもこれだけ高騰した電気料金の対策として事実を確認し実行する企業や自治体が、多く出てきている。
2027年には空調の省エネ基準改正で大きな削減が義務付けられているが、これだけでも30%程度のクーラーの消費電力が減っていく。日本中のクーラーの省エネ性能がさらに進み、冷媒ガスの交換を行うことで3割電気使用量が減ったならば、一体何千万㌗の電源が不要になるか、なぜ資源エネルギー庁は試算しようとしないのか。この照明と空調の大改革がもたらす省エネ量はAIやデータセンターの需要増どころではないだろう。都合の悪いところには、目をつぶり、根拠のない不安を煽ることで自分たちの政策を作ろうとしている。いつか見た景色である。
元北海道電力社員で電気事業連合会の副部長を経験し、全国の自治体に電気料金削減と脱炭素のアドバイスをしている立場として、今回のエネルギー爆増説はあまりにも国民をバカにしたレベルの低いものだと考える。省エネルギーこそが最も安全で正しい道である。
エネルギー基本計画のパブリックコメントはこれから始まるようだが、エネルギー基本計画に現実的な省エネの計画をしっかり位置づけ、照明分野と空調分野の原子力発電所数10基分または火力発電所数10基分にもなるだろう現実的な可能性を織り込むべきだと主張したい。(次回は、27日配信予定)