街路樹ものがたり(47) 琉球首里:聖なる樹を抱く城

昨今人気の日本の城の数々は、戦闘を想定した軍事要塞のカラーが強いです。しかし琉球王国の首里城は、御嶽(ウタキ:神が宿る聖域で祭祀を行う場所)を10カ所も擁する宗教色の強い城です。

首里城は13世紀以来の琉球王朝の王城ですが、第二次大戦等で何度も倒壊や消失を経ています。今は国営公園ですが、管理は沖縄県に移管され、さらに美ら海財団に委託されています。

御嶽は森の中のポッカリと空いた空間や、岩、樹木であることが多く、樹木は重要な構成要素です。首里城内の聖域「京の内」にも御嶽と御嶽林があります。樹種はガジュマル、アコウ、アカギ等、南方の常緑高木です。

首里城内にはお花畑もありました。菊畑・小菊畑が御内原にあったという伝承に基づき、王家や女官の生活を彩る花畑に、菊が多種(観賞種、野生種、薬用種)植わっていたのではと考えられています。王家の花園は、小さいながら、私的で親密な空間です。

城下の金城には、奇跡的に残った大アカギ群があり、一帯に特別な空気が漂っています。

石碑に説明があります。「首里金城の大アカギ 1972(昭47)年…国指定天然記念物

金城獄境内には推定樹齢200年以上と思われるアカギの大木が6本生育しています。樹高は約20㍍で、樹幹にはホウビカンジュ・ハブカズラ・シマオオタミワタリ・クワズイモ・ハマイヌビワなどが着生しています。

アカギは琉球列島・熱帯アジア・ポリネシア・オーストラリアなどに分布するトウダイグサ科の樹木です。沖縄県内では普通に見られる樹木ですが、このような大木群が人里にみられるのは内金城獄境内だけです。第二次大戦前までは首里城内及び城外周辺にもこのようなアカギの大木が生育していましたが、戦争でほとんど消失してしまいました。…」これも戦争による被害ですか。

沖縄県の木はリュウキュウマツです。台風の多い沖縄で潮風にも強いそうで、街路樹に使われています。珍しいネムノキ(ホウオウボク)の街路樹もあります。琉球の伝統的感覚からしたら、街路樹も伸び伸びとあるはずですが、なんと無残な伐採現場もありました。これは大和(日本)の悪しき影響でしょうか。

一般社団法人 街路樹を守る会 代表(共立女子大学他 非常勤講師)愛 みち子

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久米島紬を着て首里の街路樹と
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首里金城の大アカギの1本。大きく茂り、全体を1枚の写真に収められない
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首里の松の街路樹(2022年12月撮影)