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特別インタビュー・最終処分場のPFAS問題について 全産連・都築最終処分部会長に聞く

全国産業資源循環連合会理事・最終処分部会長(都築鋼産代表取締役副社長) 

都築 建氏

産業廃棄物最終処分場からの有機フッ素化合物(PFAS)流出が問題視され始めている。昨年、一部の産業廃棄物最終処分場でPFASが比較的高い濃度で検出された事例があり、最終処分場が真の発生源であるかのような報道も見られている。国も最終処分場排水に新たな指針等を設ける可能性も示唆しており、排出事業者から廃棄物を受け入れ適正に処理してきた処分業者からは、戸惑いとともに安定型処分場での受け入れができなくなることを危惧する声も出ている。全国産業資源循環連合会最終処分部会の都築建部会長に、PFAS問題に対する見方や今後の対応などについて聞いた。

処分業者は発生者ではなく被害者、実態把握し適正処理推進を

都築部会長
都築 建最終処分部会長

――最終処分場からのPFASの流出が問題視されているが。

最近PFASが産業廃棄物最終処分場で比較的高い濃度で検出されている例が報告されており、あたかも最終処分場が真の発生者であるような報道がされているケースがある。しかし、PFASは1万種類ともいわれ、さまざまなものに使われており、排出事業者はしらずにわれわれ産業廃棄物最終処分場へPFAS含有の産業廃棄物を排出してきて、われわれとしては排出者から受け入れたものを適正に処分してきた。最終処分場はPFASの真の発生者ではなく、最終処分業者はむしろ被害者であるということを強く主張したい。

――PFASについてどう見ているか。

PFASについてはまだ実態が分かっていない部分が多く、十分な知見が不足していると感じている。昨年12月6日の熊本市の臨時市長記者会見の資料によれば、豊田川の寿徳開発(滴水)のPFAS濃度は下流70ng/Lであるが、その下流にある八木運送の上流で90ng/Lに増加している。この増加原因は最終処分場の立地では説明できず、その他の発生源が示唆される調査結果だ。さまざまな発生源が考えられるが、一方的に最終処分場だけが原因と目されることが多いのではないかと感じている。

――新たな規制がかけられる可能性もあるが。

最終処分場に対して何らかの規制強化をされた場合、PFASの真の発生者ではないわれわれ最終処分業者が、対応への責任があるとされて新たな設備投資やランニングコストを負担するのは話が違うと思う。過去に法律を遵守して埋め立てた産業廃棄物について、排出事業者からPFASへの対策費はいただいていない。

安定型最終処分場に対して仮に何らかの規制をかけるとするならば、対応策も現時点では見つかっていない。安定型で埋め立てできなくなってしまうと、廃棄物は管理型埋め立てになることが想定されるが、そうなれば管理型最終処分場はすぐに埋まってしまうだろう。行き場を失った産業廃棄物が不法投棄されることが懸念される。

また、民間である安定型産業廃棄物処分業者が廃業・倒産に至ることにもつながってしまう。PFASの社会的蓄積と使用がなくならなければ、最終処分場を廃止することもできなくなるおそれがある。廃止ができないような処分場事業を営むことはできない。廃止できないということは、PFASを受け入れられるのは管理型ではなく遮断型だけになるが、管理型ですら設置することは大変困難な状況だ。

――今後どのように対応していくか。

現時点で考え得る対応策としては、水処理施設の新設や増設をするなどの対応をしていくしかないと思うが、そうなると処分業者にとって大きな費用負担となり、中小企業の多いわれわれ業界にとってはなかなか厳しい。本来排出側に費用負担を求めたいところだが、PFAS含有物の排出元を特定するのも難しいので、行政などの支援が必要となるだろう。いずれにしても今後のわれわれの対応としては、最終処分部会に「最終処分場PFAS検討会」(仮称)を立ち上げて、PFASへの技術的な対応や、国への意見など、リサーチしながら取りまとめていきたいと考えている。

――現状や排出事業者に求めることは。

もちろん迅速に対応しなければならない問題ではあるだろうが、PFASはまだまだ実態が明確になっていないので、国には拙速に規制を設けるのではなく、実態をよく見極めて慎重に対応策を検討していっていただきたい。そうでないと対応できない処分業者が続出し、行き場のなくなった廃棄物が不法投棄されるという新たな環境問題にもつながりかねない。

排出事業者には、やはりまずは情報提供をお願いしたい。有害性が高いおそれのあるPFASについては、当面は最終処分場に搬入することは控え、何らかの対応を考えていかざるを得ないだろう。排出事業者には自らが出す廃棄物に何が入っているかをきちんと認識し、できるだけ分別に取り組み、処理・処分業者に正しく情報を伝達することを心がけていただきたい。

知らずに有害物質等が含有しているものを受け入れ、後から基準値が設けられたことで処分場を閉鎖できなくなってしまうのは、われわれにとっては死活問題だ。受け入れる廃棄物に何が入っているかを正しく把握した上で適正な処理処分を行い、維持管理して処分場を早期廃止に向けて管理していくことが重要だ。今後PFASに対する知見が深まり、PFAS含有廃棄物の適正処理が推進されることを願う。

   (聞き手・黒岩修)