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東風西風(2025年11月5日)

いつか耳目に触れない日がない「厳しさを増す我が国の安全保障環境」の枕詞。予期されているのは世界史的な地殻変動のリスクか。恐るべきはたぶんその手前で、社会の内側からも大きな変質を事実目の当たりにできることだ▼自由と、西側諸国の国際協調の中心地だった米国が数多の友邦に負担を強いグローバリズムを後退させる世紀の転換を果たした。これが同国である程度常態化すると見込まれている。絶対的な言論の自由を標榜したウェブで、それを養分に高度のAIが増殖し偽りの言論をばらまく環境を整えた。民主主義の基盤である各個の信頼と平等に画面越しで致命傷を与えつつある。台湾の賢人は「AIは見分けられない」として早くもデジタル社会の仙人たる人生訓を垂れた。被爆国にして有数の原発事故を招いた、願わくば空前絶後の日本での原発回帰と、原子力のさらなる利用。「貧すれば鈍する」。内外の脅威や飢餓に駆り立てられたとき一気に事は運ぶものだが、こんな時代だから変わることの手触りを等閑にしたくはない▼石原宏高環境相は日本の環境技術が「有益な外交ツールになる」と見出した。慧眼この上ないが、環境はそれ自体で元来良い。外的な有用性への変質におかさるべからざる「環境権」も要る。(潤)