2023年我が社の環境ビジネス戦略 管清工業 代表取締役 長谷川 健司 氏

――2022年を振り返って。

近年は管路管理の包括的民間委託が増え、単発的な仕事に代わり年間、さらには3~5年の契約で動き始めている。そうしたこともあって、月々の業績も前期と比べ大きな変化はなく、昨年6月の決算も前年と同等ぐらいの数字を上げることができた。

――包括的民間委託の動きについては。

昨年9月に水道行政が厚生労働省から国土交通省と環境省へ移管することが決まった。水質は環境省が担当し、施設整備や災害時の対応などは国土交通省が担うことになる。上下水道一体行政の実現となれば、包括的民間委託も上下水道一体という流れが出てくるので水道業界の人たちとうまくコラボしていければと考えている。

例えば災害時の対応でいえば、下水道が詰まってるのに水道を使えるようにしたことで下水が溢れてしまうケースもあった。上下水道が連携をとれるようになれば、こうしたケースにもうまく対応できるようになるのではないか。

上下水道だけでなく道路や橋、公共施設の管理を一体で民間に委託するという流れもある。そうした中、当社は下水道の管路管理をテリトリーとし、この分野を極めていきたい。「管路管理なら管清工業」と誰からもいわれるような存在になりたい。

――水道分野への事業展開については。

下水道で長年培ってきた我々の技術やノウハウが水道でも十分に生かせると考えている。水道管は耐用年数が来ると交換されるが、道路事情などで交換が難しい場合などは、錆などを取り除いて管更生する方法もある。水質を担保できる材料や工法も揃っており、要請があればいつでも対応できる体制を整えている。

――昨年「厚木の杜 環境リサーチセンター」が開所した。

管路の調査や清掃に使われた機材などを展示した記念館や、排水設備管理の研究開発や技能向上のトレーニングを行う研究・研修棟、研修用の下水道管路、ランドマークとなる「水まもりトイレ」が完成し、昨年11月に開所した。下水道管路に実際に触れることもでき、関係団体・自治体・市民の方々の体験学習の場としても活用できる。災害時には避難場所にもなり、支援のためのベースキャンプにもなる。今年は、こうした点を多くの人に知ってもらい、活用してもらいたい。

――昨年8月に設立した新会社「CWP GLOBAL」については。

Carrying Water Projectの「水を通じて世界とつながり、助け合い、分かち合う」というミッションに賛同し、発展途上国の水環境を支援するため共同で新会社を立ち上げた。その最初の国として東ティモールで活動を開始し、9月には当社の社員も現地を訪問し今後の事業について政府関係者らと意見交換を行った。このプロジェクトは、現地の水環境の改善はもちろんのこと、若者に働く機会と技術を提供し新しいビジネスを作り出す狙いがある。当社のノウハウや経験を伝えることでサポートできればと考えている。

――ロボット化やAIの活用については。

遠隔操作で管路内を調査できるシステムの導入を進めたい。現在のTVカメラによる調査では現場でオペレーターが操作をしているが、遠隔操作を導入すれば、オペレーターは事務所で操作が行える。例えば1日に4件の現場があれば、それぞれにオペレーターを派遣することになるが、遠隔操作が可能になれば、1人のオペレーターで4つの現場をカバーできる。作業に必要な人員数も減らすことができ、業務の効率化が図れる。

――昨年5月に日本下水サーベイランス協会が設立され、御社も参画しているが。

下水サーベイランスは下水道の新たな活用の仕方を示すことができた。新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスなどの感染状況の把握にも活用できる。下水道は単なる汚れた水ではなく、さまざまな情報の宝庫だ。今後も地道に取り組みを進めていければと考えている。

――今年の抱負や注力したい事業については。

水道も含めた管路管理の包括的民間委託の受注に向けて取り組むとともに、その上で、市民への予防保全型の維持管理の提案に注力していきたい。予防保全のために管路管理に関わるデータを集約し、AIなどを使って分析できるようにする。過去のデータを分析し、溢水しやすい箇所や土砂が堆積しやすい箇所、腐食しやすい箇所などが予測できれば、事前に対策がとれる。点検や調査、清掃、修繕にプラスして民間の創意工夫が生かせる。当社が長年にわたり蓄積した経験値が強みになると考えている。

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長谷川健司氏