潜在するリスク、先発の優位を握れるか 各社のPFAS関連技術・製品、自治体・政府・企業の対策に貢献

規制のゆくえ、固唾飲む企業

有機フッ素化合物(PFAS)へのさらなる対策が動き出した。内閣府食品安全委員会は今年、その一部に健康への悪影響を認め1日の耐容量を示す指針値をまとめた。環境省は水環境へ流出しやすい特徴も持つPFASに対し、市民生活へ影響が大きい水道水の水質管理上の取り扱いを改める検討を始め、水源となる公共水域・地下水の監視を強める。規制で先行する米国や欧州各国の状況を注視し科学的な知見を踏まえて対応を図る。

国内企業も対策技術の開発を加速。ゼネコン、エンジニアリング各社はそれぞれに独自性を打ち出す。大林組は土壌の重金属対応で培った不溶化処理を国内で初めてPFAS汚染に適用した。大成建設は透過性地下水浄化壁工法「マルチバリア」の対象にPFASを追加。米国市場の実績を引っさげて「分級・泡沫分離処理技術」の国内展開を狙うのは清水建設だ。イオン交換樹脂を使った「De-POP`s ION(デポップスイオン)」の処理能力を誇るのは前田建設工業。奥村組が研究機関と協力し超強力酸化触媒を使った無害化の研究を進めている。土壌・地下水汚染対策で実績多数のエンバイオ・エンジニアリングは強みと自負する調査から対策へのワンストップサービスをこの分野でも貫く構え。大手建設コンサルタントの建設技術研究所らも、総合コンサルティング事業にPFAS対策を組み込むことで対応力を売り込む。

特に活性炭への吸着法は有力な対策技術として研究が進む。流機エンジニアリングは独自のフィルター技術で粉末活性炭など吸着剤の地下水での浄化作用を最大化する処理システムを開発し商品化も構想する。アドバンテック東洋はPFAS除去に特化した活性炭フィルターをカートリッジとして製品化し販売拡大を図る。大流量にも対応させられるようさらなる開発に力が入る。多様な機能を併せ持つ粘土、ベントナイトを使った吸着材「Fluoro Sorb(フルオロソーブ)」で活性炭の数倍という吸着性を訴求するのはボルクレイ・ジャパンだ。

PFASは環境中でごく微量である上、厳密にリスクを回避するためには1万種にのぼるともいわれる膨大な種類の関連物質を調べ上げなければならず測定分析は困難を極める。他方、今後水質基準としてなんらかの検査が義務付けされた場合には市場ニーズはさらに高まる見通しだ。日吉は最新鋭機器と生物検定法の2本柱で分析体制を厚くする。測定分析業を支えるソリューションも活性化。Restek(レステック)はほぼ手つかずの超短鎖から短鎖のPFAS分析に特化したメソッド開発に先手で切り込む。ウエリントンラボラトリーズジャパンの「3種混合標準品」は代表的な3物質に絞り試料をまとめたことで価格を抑えて普及を図る。日本代理店発、グローバル社のスタンダード商品に採用された。

かつて公害問題を引き起こした局所・集中・単一の物質による環境汚染と異なり、広範にわたり微量に分布する多様なPFASが引き起こす目下の環境リスクに国内のキープレイヤーはどう臨むか。

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