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2025年 我が社の環境ビジネス戦略 虹技 代表取締役社長 山本 幹雄 氏 カーボンニュートラルは多方面から総合的に

鋳物の力で藻場再生、「ブルーカーボン創出」に期待 

――2024年を振り返って。

鋳物事業は全部門黒字という近年にない好調だった。23年度から価格是正に努めた効果だ。当社製品はマーケットシェアが高いものが多いので、原材料や運送費の値上がりとベースアップなど理由を細かく提示して、強い姿勢で価格交渉に臨み、価格転嫁を実現した。1月に子会社化したアルミニウム合金鋳造製品の製造・販売を行う小口合金鋳造所の業績は順調で、機能材料も上向き。中国の連結子会社2社は、利益は少ないものの何とか黒字を確保した。一方で、環境エンジニア部門は伸び悩んだ。高炉メーカーなどの設備投資が一段落し、送風機部門が振るわず、さらに5月に入札したごみ処理施設建設の案件も失注した。だが11月、徳島県海部郡衛生処理事務組合の次期ごみ処理施設建設事業を仮契約することができたので、25年度以降に向けては明るい兆しが出てきたといえる。

2025年 我が社の環境ビジネス戦略 虹技 代表取締役社長 山本 幹雄 氏 鋳物の力で藻場再生、「ブルーカーボン創出」に期待 カーボンニュートラルは多方面から総合的に_虹技 代表取締役社長 山本幹雄氏
虹技 代表取締役社長 山本幹雄氏

――環境エンジニアリング事業部の方向性は。

海部郡の案件では、災害時の避難拠点として提供できることを明確に示した点で評価を得た。ごみ処理施設の建設は国の交付金事業で、防災拠点になり得ることが求められている。そこで、30人程度を受け入れられる施設にすること、ごみ焼却の余熱回収設備に温水発生器を取り入れて、場内利用はもちろん非常時には避難者やボランティア向けに温かいお湯を提供できると具体的に提案した。また、「365日対応運転サポートシステム」の提案も評価された。施設の運転状況をモニタリングできるシステムを組み、オンラインでリアルタイム共有するので、操業の状況がつぶさに分かり、トラブルが生じた時に即座に対応できる。万一の時にはアラームが担当者の携帯電話にも直接届くようにする予定だ。本契約の4月以降、設計・建設に取りかかるため今年の売り上げには寄与できないが、今回の案件は12時間運転のいわゆる准連続式焼却炉であることに大きな意義がある。当社はこれまで一般廃棄物分野では大規模改修工事を除いては8時間運転(バッチ式)炉の実績しかなかったが、これを機に入札できる範囲が広がると思われる。環境設備部門は施設の建設だけでなく、メンテナンス案件も一つの柱。18年竣工の和気町施設は、設計・建設から運営・補修まで全てを請け負っており事業的に安定している。八丈島の施設は、現状運転のみ請け負っており、やや変則的なDBOだ。操業は順調だが、将来的に補修まで包括的に任されるよう一層信頼を高めていきたい。

――その他、環境関連のトピックスは。

小型鋳物事業の製品「鋳田籠(ちゅうたろう)」は、環境に大きく貢献できる可能性があり注目株だ。鋳田籠は、長さ1メートル、幅50センチメートルの鋳鉄製の格子を同素材の連結部品(特許取得済)で連結して枠体にして用いる土木建築資材で、鉄のリサイクル100%製品。12年に国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録され、河川等の護岸基礎工事などで洗堀を防ぐ「根固工」ほか護岸工や土留工、落差工、谷止工などに活用されている。これを海洋プランターとして活用し、「藻場」をつくるアイデアが実現化しているのだ。くさび連結方式のため工具が不要で、船で運んだ資材をダイバーが海中で手作業にて組み立てることができるので、設置は簡単でスピーディ。鋳鉄は耐久性、耐腐食性に優れ、表面の錆が被膜となり腐食を減速させるため25年で1ミリメートルほどしか減容しないと言われている上、鉄分の溶出が生態系に適した自然環境をつくるとの評価データもあり、山口大学と共同研究を進めている。そうした中で、近年注目される「ブルーカーボン創出のための藻場づくり」にも最適なことが分かり、鋳田籠工法協会として山口県の漁協などと共同で取り組んだ。結果、24年3月には0・3トン‐CO2のJブルークレジットが発行され、CO2問題について、「削減」一辺倒でなく「吸収」を考慮できる可能性も出てきた。

――今年の抱負は。

中国の不況、米国による経済への不安などさまざまな要因から市況の見通しは良くないだろう。だが、マンホール蓋などを扱う小型鋳物事業に、5億円ほどの設備投資を行って高周波誘導炉2基導入するなど、仕事の効率化に努める。

また現状2千キロワットの太陽光発電設備を東工場に設置してFIT売電しているが、2月から工事に取り掛かり西工場の建屋や社員用駐車場の屋根にも700キロワットの太陽光発電設備を自家消費用として設置する。来年度をめどに大型キュポラを電気炉に代替する計画もあり、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてはあらゆる方面から総合的に取り組む。

また、昨年100回活動記念表彰を行った県立ゆめさきの森公園内「虹の森」での森林保全活動や、定期的に行っている近隣道路の清掃活動など地域への貢献活動も継続し、引き続き企業としての責任を果たしていきたい。