東風西風(2025年6月11日)
市場の鮮魚店で異様なルックスの魚に出合った。頭は小さく全体的に白くヌメヌメ、のっぺりとした顔つき。ラベルに「ゲンゲ」とあり、かつては魚の価値のない下の下(げのげ)と呼ばれたが、コラーゲンが豊富で美味なことが知れ渡り格上げされた「幻魚」に▼かつては水族館等でしかお目にかかれなかった派手な柄や珍妙な外見の魚を店頭で見る機会が増えた。扱いが難しい、見た目が悪い、漁獲量が半端など、諸般の理由で一般市場に出回っていなかったいわゆる「未利用魚」の活用が広まっている▼福島県の漁連では、味は良いが頭が大きく小骨が多い未利用魚「カナガシラ」を活用しようと知恵を絞った。震災以降、なぜか漁獲高が10倍以上に増え、見過ごせない状況になってきたからだ▼小骨の処理が不要になる缶詰とし、独自性を出すためオリーブオイルを使ったアヒージョに仕上げた。万博に出展して試食を配ったところ大人気に。うま味が詰まったオイルごとパスタやサラダに使えば、手軽にしゃれた一品なるという▼温暖化の影響や海流の変化で狙った魚が獲れず、不人気の魚が大漁になる現象が各地で起っていると聞く。有効利用(おいしく食べる)が生態系の維持にも役立つそうだから、先入観を捨て積極的に頂くとしたい。(孝)