循環型社会づくりを支える資源循環技術・システム 産環協、2024年度「資源循環技術・システム表彰」

花王、旭化成ホームズなど9件10社

産業環境管理協会は9日、2024年度の「資源循環技術・システム表彰」の受賞者9件10社を発表した。前2回で対象者がいなかった最優秀の経済産業大臣賞を花王と旭化成ホームズの2件2社に授賞した。経産省の組織改編に伴い産業技術環境局長賞だった区分を脱炭素成長型経済構造移行推進審議官賞に改め3件4社を選んだ。今年で50回目の節目を迎えるこの表彰制度は持続可能な社会に向けて循環型社会の形成と3Rのさらなる普及を目指すもの。16日に機械振興会館で表彰式と基調講演、50回を記念する特別講演を執り行う。

循環型社会づくりを支える資源循環技術・システム 産環協、2024年度「資源循環技術・システム表彰」 花王、旭化成ホームズなど9件10社_2024年度「資源循環技術・システム表彰」受賞者一覧
2024年度「資源循環技術・システム表彰」受賞者一覧

経済産業大臣賞

●難処理PET廃材の有効利用~高耐久化アスファルト舗装による循環経済の実現~(花王)

使用済ポリエチレンテレフタレート(PET)をアスファルト改質剤にリサイクルする技術を開発しアスファルト舗装の高耐久化に成功した。また、モノマーから同様のポリマーを合成するよりも少ないエネルギーで合成可能とする技術を確立しサーキュラーエコノミー(循環経済)に貢献する製品として実用化した。

従来、産業用工程部材として活用される廃PETフィルムの多くは表面処理が施されているため、サーマルリサイクル処理されており、ケミカルリサイクル処理される場合もエネルギー消費の点で効率的な活用が求められる。また、高耐久化アスファルト舗装に導入される既存ポリマーは、添加量に伴い増粘するなど利用に限界があり、作業性の悪化を招いていた。さらに、競合法の中には舗装にかかる工期が長くなり長期の交通規制が必要になるなどの問題があった。本技術はこれまでケミカルリサイクルが困難であった産業廃棄物の使用済みPETの骨格を活用したポリエステル樹脂を設計することにより従来よりも耐久性を向上させ、水や油にも強く、舗装から発生する摩耗粉塵を抑制できる。

重荷重車両による損傷抑制、補修工事削減によるエネルギー利用の削減に加え、モノマーから合成するよりも少ないエネルギーで合成できる。紫外線で劣化した海洋廃PETについてもこの技術が応用できることを確認しており海洋プラスチック削減技術としても活用できる。

循環型社会づくりを支える資源循環技術・システム 産環協、2024年度「資源循環技術・システム表彰」 花王、旭化成ホームズなど9件10社_難処理PET廃材の有効利用(花王)
難処理PET廃材の有効利用(花王)

●LONGLIFEを実現する住宅事業(旭化成ホームズ)

同社は1972年の創業当初よりビルド&スクラップ型住宅から脱却しストック型住宅の提供を目指して、住宅における商品設計・部材製造からリマーケティングに至るまでのライフサイクルについて持続的な資源の循環利用につなげるさまざまなシステムを構築した。

循環経済の観点では個々の製品やプロセスではなく、全体としてのシステムを考慮しあらゆる段階での相互依存性と効果を検討する必要がある。他方、創業当時の日本の住宅は一般的にビルド&スクラップ型であり持続的な資源の循環利用に対しては十分に配慮されていなかった。

同社の取り組みは住宅のライフサイクルを通した長寿命化と顧客接点維持のため製品設計・部材製造から、建築廃材の分別・処理、居住段階のメンテナンス、リマーケティングまでの全ての段階でハード面とソフト面のサービスを連動させたシステムを構築。個々のプロセスではなく世代を超えて持続的に循環利用されるための仕組みがシステム全体で機能している。高品質な材料を用いるだけでなく将来のメンテナンス性を考慮した仕様設計・開発と60年の無料点検を提供する維持管理により平均的な住宅に比べると異例の60年耐用する長寿命化を実現している。各施工現場から排出した廃材についてもデータベースを活用し、職種や品目別の排出量に加え、商品タイプや坪数などの情報から分析することで、排出量の削減に取り組んでいる。最終的に60種類以上に再分別し63%をマテリアルリサイクルするなど、全量リサイクル処理している。

循環型社会づくりを支える資源循環技術・システム 産環協、2024年度「資源循環技術・システム表彰」 花王、旭化成ホームズなど9件10社_LONGLIFEを実現する住宅事業(旭化成ホームズ)
LONGLIFEを実現する住宅事業(旭化成ホームズ)

脱炭素成長型経済構造移行推進審議官賞(旧産業技術環境局長賞)

●食品リサイクルによるサーキュラーエコノミーの実現~電気と肥料のダブルリサイクルループ~(Jバイオフードリサイクル)

従来スーパーなどから出る食品廃棄物は 「食品リサイクル法」によって発生抑制、再生利用、減量と優先順位が定められており、再生利用においては最優先の「飼料化」や「肥料化」が主なリサイクル手法として推進されている。ただ、容器包装の異物が含まれることがあり多くはサーマルリサイクルされているのが実態だ。一方、サーマルリサイクルは特殊なケースを除き食品リサイクル手法として認められておらず、高含水率である食品廃棄物を焼却するには助燃材が必要となる。焼却におけるエネルギー回収効率が低いことが課題となる。

同社は食品廃棄物由来の有機物を発酵させバイオガスを生産し、高含水率の生ごみや食品廃棄物の種類によってメタン発酵の効率が落ちないよう、AIを使って仮想上の工場を再現するデジタルツイン技術で最適な操業条件を探索。その操業条件を実操業に反映することで発電効率を維持しており効率よくカーボンニュートラルなエネルギーを回収、CO2排出量を削減している。創出した電気を排出事業者に提供するとともに、発酵残渣を肥料として農地に提供し、その農作物を飲食店に還元する仕組みも構築した。

輸入原料や化石燃料を原料とした化学薬品の使用抑制にも寄与する。

●カーボンニュートラルの実現に資する自動車リユース部品でサーキュラーエコノミーへの移行を加速(NGP日本自動車リサイクル事業協同組合)

これまでリサイクル処理が困難な部品は焼却・埋立処理されてきた。リユース部品に対する消費資源の節約や環境負荷の削減等の利点について、具体的な根拠を明らかにする必要があるなど課題があった。

同組合は自動車リユース部品のCO2削減効果を定量的に示すために多数の車種を分解し、部品の重量と素材調査を行ったデータに基づく数値を算出。組合が運営する「自動車リユース部品在庫共有システム」へ搭載、実用化した。見積書、請求書にCO2削減量を明記することでユーザーに環境貢献度を見える化し、

リユース部品の付加価値を高め、自動車修理の選択肢の1つに組み込んだ。

品質管理においてもISO9001を軸に組合員の部品生産、登録までの全プロセスを一括してマネジメントし、生産、登録業務を標準化して品質レベルの揃った商品を在庫し販売面でも統一の品質保証書を示すことで安心して購入できる体制を確立した。

●自動車リユース・リビルト部品普及に向けた包括的ビジネスモデルの構築~リユース・リビルト部品の普及拡大に向けたシステム開発からヒトの教育・ユーザーへの啓蒙活動を通じた量と質の確保に至る包括的なビジネスモデル~(JARA、JARAグループ)

従来から業界が抱える課題について①1点ごとに異なる中古部品の商品状態を正確に伝える共通言語の標準化が未整備②自動車メーカー・販売/買取業者・保険会社・修理業者・解体業者・システム会社・消費者など、バリューチェーンに関わる関係者が多岐にわたるため、正確な商品情報の伝達・商品の認知度向上・販売環境の整備・流通システムの改善などに一貫した施策を打つことが困難③リユース・リビルト部品の量および質確保を支える流通ネットワークの拡大、人材育成の必要性――の3点を指摘する。

2社らは中古部品の商品状態を正確に伝えるための商品登録基準の策定と教育だけでなく、システムユーザー自らがシステム開発に参画し、流通インフラの強化を実施している。

販売環境の整備という点で業界初となるリユース部品の瑕疵保証制度の導入、カーオーナー向けのリユース部品の認知向上に向けた取り組みを実施することで自動車のバリューチェーン全体で自動車部品のリユース事業の抱える課題を解決し資源消費の低減とリユースを中心とした仕組みを構築。事業化に成功した。