2023年我が社の環境ビジネス戦略 市川環境ホールディングス/市川環境エンジニアリング 代表取締役社長 水谷 重夫 氏

――業界を取り巻く環境は。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いていたが、昨年後半あたりから当社の取引先である大型商業施設などの集客が改善傾向となり、まだ十分とは言えないもののオフィス関連で6割程度、飲食・観光関連で7割程度回復してきている。一方でウクライナ問題が起き、エネルギー価格が高騰しており、グループ各社の工場では多くの電気を使うため影響を受けている状況だ。

――昨年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行されたが。

プラスチックのリサイクル量が60万㌧から200万㌧程度まで拡大される見込みだ。当社は容器包装リサイクル法スタート時にはエム・エム・プラスチックを立ち上げていち早く対応した。今回も新法に対応した廃プラリサイクルを進めるべく戦略を検討している。リサイクル手法としては、エム・エム・プラスチックでマテリアルリサイクル、当社行徳工場でRPFの燃料化を行ってきたが、200万㌧ものプラスチックをリサイクルするためにはこれに加えてケミカルリサイクルにも対応していく必要があると考えている。

――グループの状況は。

業績は一昨年はコロナの影響でやや落ち込んだが、昨年は増益に転じており、一昨年12月にクボタと中部電力が資本参加した効果が着実に出てきているといえる。グループ会社は昨年手塚産業(川崎市)が新たに加わり27社となった。2月には日本経済団体連合会に加盟した。廃棄物行政について、もちろん全国産業資源循環連合会を通じてということもあるが、経団連ではGX(グリーントランフォーメーション)を進めており、経済界全体として政府に対して2050年カーボンニュートラル実現に向け、資源循環型産業促進の重要性を働きかけていきたいと思っている。

――大規模資本参加の効果は。

クボタは世界的農機メーカーだが、破砕機の製造など環境関連事業も手掛けており、当社グループ全体のエンジニア力強化をはじめ、さまざまな支援をいただいている。中部電力は太陽光、風力、木質バイオマス発電などの再生可能エネルギーに加え、当社グループのバイオエナジーが手掛ける食品廃棄物からメタン発酵によって発生するガスを活用した発電の分野では事業拡大に向けて支援いただいている。現在クボタ、中部電力の両社から30人近い方に出向、兼務として当社を支援していただいており、工場運営の効率化や新技術の開発などさまざまなところで効果が出てきている。

――SDGsやCSRへの取り組みは。

昨年は2月に市川環境エンジニアリング、12月に市川環境ホールディングスのCSR報告書を作成、公開し、対外的にも事業や経営方針の見える化を図った。また、全社員で集めたペットボトルキャップで、エム・エム・プラスチックが製造しているパレットの小型モデルとして、スマホスタンドを作成し、お客様や社員へ配布した。これは、プラスチックリサイクルをより身近に感じてもらうのが狙いだ。日本ではまだ自動車の部品に廃プラは使われていないが、欧州では逆に廃プラの使用が義務付けられている。より廃プラの有効利用が進むよう、全産連や経団連などを通じて働きかけていきたい。

――HD体制に移行して5年目となったが。

HDのもと、「ワンチーム」を掲げて社内規程、人事制度などの統一化を図り、グループ会社間の人材交流も始めている。名刺の裏に各社の紹介を入れたデザインも昨年より継続し、お客様およびグループ社員に当社グループの理解を深めている。グループのイントラも統一し、情報の共有も図った。こうした効果が出始めていると感じている。

――今年の展望は。

クボタ、中部電力が資本参加して昨年12月で1年が経過した。株主の機能やノウハウを取り入れ、さらに市川環境を飛躍させたいと思っている。廃棄物を燃やさず、最終処分する量を極力減らし、再資源化、燃料化、製品化に結びつくような資源循環型ビジネスモデルをさまざまな企業と連携しながら構築していくことを目指していきたい。事業エリアの拡大では昨年中部支社を開設したが、今年は首都圏から関東全域に事業領域を広げるため、新たな拠点を設けたいと考えている。昨年新たにグループに加わった手塚産業のノウハウなどを生かし、工場や大型施設全体のファシリティマネジメントなども手掛けていきたい。また、すでに複数企業と連携してプラ新法に対応するための実証事業に取り組んでいるが、これを実際にデファクトスタンダードな事業にできるよう注力していく。プラスチックをどのように集め、処理するか、新しいプラスチックリサイクルのビジネスモデル創出に向けて実行の年にしたい。

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水谷重夫氏