日本環境保全協会特集’24

日本環境保全協会 山条 忠文 会長に聞く
日本環境保全協会、6月10日に総会開催 地震対応と浄化槽維持管理の徹底を
環境省に合併浄化槽転換と避難所への浄化槽設置を要望
浄化槽台帳整備と維持管理の電子化

日本環境保全協会(以後、協会と表記)は市町村から委託を受けた一般廃棄物収集運搬業者による都道府県団体の全国組織。ごみ、し尿、浄化槽の清掃・保守点検、地域住民に必要不可欠な公共性の高い事業を担っており、1961年に設立した日本清掃協会からの長い歴史がある。2017年に5代目会長に就任した山条忠文会長は、香川県環境保全協会の会長も務めており、11月には地元で大会も予定している。今年1月1日に発生した能登半島地震においても、避難所トイレへの支援や災害廃棄物処理に協力した。6月10日には東京都千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで総会と関連業者による併設環境展が開催される。そこで山条会長に、能登半島地震支援状況と、浄化槽についての国への要望など、最近の話題を聞いた。

日本環境保全協会 山条忠文会長
日本環境保全協会 山条忠文会長

――元日の能登半島地震への支援は。

災害関連死を含め、260名の方が亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。被災された方にもお見舞いを申し上げ、一日も早い復旧復興をお祈りします。

協会は2017年の1月17日に災害廃棄物支援ネットワークチームの認定を受けており、地震発生後、環境省から電話で緊急支援要請がありました。協会は災害支援を目的に、北海道東北、関東、東海近畿、中国四国、九州と、石川・富山・福井で構成される北陸の6ブロックの協議会に分けています。今回は協会の副会長である富山県環境保全協会の廣瀬淳理事長に私がお願いして、現場の責任者として石川県の河崎祐彦理事長、福井県の二木和則会長との連携をしてもらい、支援態勢に入りました。本部から北陸ブロックへ義援金を贈呈しました。

――能登地震の被災状況と復旧予定は。

17市町で下水道、集落排水、コミュニティープラント、合併浄化槽に被害がありました。特に珠洲市は下水道の94%が被害を受けました。下水道は1カ所で陥没すると全体的に被害を受けます。能登地域の焼却施設とし尿処理施設は全12施設が被害を受け、処理不能となりました。

し尿処理場については徐々に復興し、6月から稼働が予定されていますが、浄化槽汚泥に関しては受け入れ未定です。

――災害廃棄物処理の見通しは。

災害廃棄物も一般廃棄物なので、行政が対応しなければなりません。行政から委託を受けた我々一般廃棄物処理業者が担当します。ただ、自動車のように処理できないものもあります。そこで解体業者、産廃業者とも協議して、円満に連携する体制を構築しております。

現在石川県内で、解体すべき建物が2万2000棟、5月28日までに解体の申請が1万5614棟あります。しかし解体を実施したのは831棟、完了したのは346棟で全体のわずか3%しかありません。要因の一つに、解体は所有者全員の同意が必要の原則があります。そこで環境省は新たな発表をしました。相続ができていない、所有権が何人にも渡り話がまとまらない建物は、地域を限定して、法務局の登記官が職権で建物の滅失の登記手続きをできるようにしました。建物所有、利用者が必要なものを持ち出してから、市町村の判断で公費を入れて解体ができるようになりました。今後は建物の解体が進むと思われます。

――避難所仮設トイレの支援状況は。

1月3日時点で避難所が335カ所、避難者が3300人だったところ、5月8日では避難所117カ所避難者が2151人とまだ多くの方が避難所におられる状況です。仮設トイレの数は1月10日には国管轄のものが452基、その後700基設置されました。その他の県、市、町、民間が設置した数は未確認です。

仮設トイレのし尿収集は毎日行いませんが、最大1日当たり500基程度の収集を行ないました。5月になり避難者が減りましたので、円滑に収集はできています。協会と石川県廃棄物協同組合、北陸ブロック協議会、隣接する東北ブロックが連携して支援しています。

バキューム車の支援は4月末までの延べ台数で1951台です。この数は協会の会員がし尿を回収し地元の市町に運んだ車数と、そこから全国環境整備事業協同組合連合会の会員が地域外のし尿処理場に持っていって処理委託した車数を含みます。今回は他の協会とも円滑に連携できました。

――支援された仮設トイレの課題は。

支援された仮設トイレで問題となったのは、和式が多い点です。高齢者が使えないので、洋式にするべきです。好意で設置するものは、高齢者や障害を持つ方が使えるものでなければなりません。まずは仮設の洋式トイレがすぐ数百台揃うようにしていただきたいです。

トレーラートイレなどの本格的な快適トイレが望ましいのですが、高価なので自治体では所有が難しいです。国が予算化して支援し、維持管理込みで協会の所有にして、自治体に支援を行う方法も考えられます。

――浄化槽について環境省に要望したそうですが。

浄化槽の課題は、浄化槽台帳の整備、年1回清掃の完全実施、法定検査の実施、特定単独浄化槽の合併処理浄化槽転換です。2月9日に総務省から環境省へ、都道府県等が特定単独浄化槽と判定して浄化槽管理者に除却等の助言と指導を行なう制度が導入されているのに進んでいないので見直すよう、文書で勧告されました。これを受け環境省は浄化槽法施行状況点検検討会を立上げ、5月16日ヒアリングを協会に対して行いました。その時に要望として、「古い単独浄化槽は悪者扱いになっていますが、設置された40年以上前は地方のくみ取りトイレを水洗化し、都市との格差解消に役立ちました。現状を一番知っているのは清掃業者です。地方は高齢者が多く、清掃業者が単独浄化槽を直しながら使っています。合併浄化槽に転換させるには、撤去予定年数を設定し、それまで撤去すれば補助金を出し、過ぎたら実費で撤去させるような施策が必要です」と答えました。合わせて要望したのは、「災害用トイレのための避難所への合併浄化槽の設置の予算化もお願いします。合併浄化槽は災害に強く、大地震後も接続パイプの修理だけで使えます。避難所には下水を使っている場所にも浄化槽を設置して欲しいです。避難所に浄化槽

を設置する際の人槽は建物形状により決めるのではなく、沢山の人が避難することを想定した人槽にしないと処理しきれません」とのお願いです。

――浄化槽台帳整備の方法については。

浄化槽の情報は清掃業者が握っていますので、清掃、保守点検した浄化槽の情報を各協会に伝え、協会と自治体が連携して行えば、台帳完成がスムーズにできると思います。香川県は浄化槽台帳ができており、他の地域の作成に協会も協力します。

――浄化槽維持管理の実態調査の結果は。

浄化槽法が制定されて41年となりますが、国が実態調査を行ったところ、浄化槽の清掃、保守点検、法定検査の維持管理が高い県は90%だったのに対し、低い県ではわずか20%と格差が大きく、いまだに徹底されていないことが明らかになりました。昨年5月25日に環境省環境再生・資源循環局長名で、浄化槽に基づく維持管理の徹底を都道府県知事と政令市に初めて文書で指示しました。今回の総会でも大きなテーマとして、浄化槽の維持管理の徹底を訴える予定となっています。

――清掃管理業務の電子化はどう行うべきでしょう。

零細な業者も多く、すぐに全会員業者が行うことは難しいと思います。各県で試行的に半分の業者から電子化を行い、運用に基づき協会がマニュアルを作り、簡便なものにして一括で導入すれば金額も安くなり、何年か後には全業者に網羅すると思います。現場ですぐ電子入力することにより、浄化槽の情報化ができますので、国が支援しても良いと思います。

――コロナ禍で仕事を継続したので職員の意欲が向上したそうですが。

コロナ禍で活動制限が行われたときも、ごみ収集やし尿くみ取り、浄化槽清掃は国民の安定確保のために不可欠な事業として、危険があっても1日も休まず行いました。住民からは、こんな時期にご苦労様と声をかけられたり、ごみ袋にお礼を書いてもらったりして、収集する職員の仕事の意欲向上に役立ちました。

昔は行政で衛生課への配属は左遷との偏見がありましたが、今や環境部は花形の部署です。会員の会社でも若い人が昔と違い、嫌々仕事をする人はいなくなりました。若い人は、この仕事は社会的に貢献できることを理解しており、清掃の自動車で現場の体験をする他に、浄化槽管理士資格を取り管理の仕事をやり、我々の仕事があってこそ業界が成り立つと胸を張って言える時代になりました。協会も青年部会の育成に取り組んで行きます。

――秋の大会を開催する会長の地元の香川県の話題をお願いします。

日本環境保全協会一般廃棄物適正処理推進in香川大会を11月15日、高松市のJRホテルクレメントで開催します。

香川県では、県を中心に全市町と香川県浄化槽協会と香川県環境保全協会が参画して3月19日に「香川県浄化槽適正処理促進連絡協議会」が発足しました。行政と連携し、県を上げて積極的に発信していきます。