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南鳥島はいま、日本の戦略上の重要拠点 経産省、核ごみ文献調査を申し入れ 国が前面、レアアースの採掘も開始

小笠原諸島・南鳥島沖での戦略物質・レアアース(希土類)の採掘が注目される中、南鳥島で「核のごみ」調査が突如浮上した。経済産業省は3日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場をめぐり、第1段階の文献調査を東京都小笠原村の南鳥島で実施することを同村に申し入れた。調査が実施されれば全国で4例目。14、15日に小笠原村で住民説明会を開く。南鳥島は2つの意味でいま、日本の戦略上の重要拠点だ。(小峰純)

赤沢亮生経済産業相は3日の記者会見で「南鳥島は(適正を示す)科学的特性マップで好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い。地上施設を設置できる未利用地が存在し、全島が国有地だ」と説明した。3日午後には同省資源エネルギー庁の吉村一元エネルギー・地域政策統括調整官が父島にある小笠原村役場で渋谷正昭村長と面会し、申し入れ書を手交した。経産省と村、調査・建設の実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は14日に父島、15日に母島で村民説明会を開く。

自治体からの申請を国が待つ従来のやり方から、国が前面に立つ姿勢を切り替えた。

政府は原発から発生する使用済み核燃料を再処理して発電に使う「核燃料サイクル」を推進しており、この過程で核のごみが生まれる。人が直接触れれば、十数秒間で死ぬほど放射線量が極めて高いため、ガラスと混ぜて固め、地下300メートル以上の深い地盤に埋める「地層処分」が必要となる。放射能が自然のウラン鉱石と同じレベルまで低下するには数万年単位の時間がかかる。

南鳥島は都心から南東約1900キロメートルに位置する周囲7・6キロメートルの小島で、小笠原村役場がある父島からも約1200キロメートル離れている。海上自衛隊や国土交通省・気象庁の政府職員らが常駐しているだけの国有地で、住民もおらず、地元合意は比較的得やすいとみられる。

政府は2017年に、全国の処分地の適性を色分けで示す「科学的特性マップ」を公表し、南鳥島は「輸送面でも好ましい」と評価した。火山活動が終了している南鳥島は極めてゆっくりと移動する海洋プレート上にあり「最も安定している」との評価もある。地震学が専門で元京都大学総長の尾池和夫氏が2020年に南鳥島を提起していた。

国は最終処分場の建設地を選ぶために、2000年に施行した最終処分法で、地震活動記録を集める「文献調査」、実際に地表からボーリングで掘削する「概要調査」、地下深くの施設で岩盤や地下水を調べる「精密調査」という3段階の手順を決めた。調査には合計で約20年かかるという。

これまで各自治体が調査に応募する「手上げ方式」で進めてきたが、20年に北海道寿都町が全国で初めて受け入れを決めて以降、調査が始まったのは同町に近い神恵内村、佐賀県玄海町の合計3町村だけだ。

調査・建設の実施主体であるNUMOは24年、寿都町と神恵内村で第2段階となる概要調査の候補地を決めた。両町村長は移行に前向きなものの、北海道の鈴木直道知事と佐賀県の山口祥義知事はいずれも反対姿勢を示している。なお文献調査を実施した自治体には最大20億円、概要調査に移行した場合は最大70億円の交付金が出る。

一方、東京都の小池百合子知事は4日、最終処分場の選定をめぐり記者団の質問に答え、「将来世代への先送りができない喫緊の課題だ」と述べた。また「原子力政策は国があたるべきものである一方で、日本全体で考えていく必要がある」とも語った。

世界ではフィンランドが24年から最終処分場の試運転が始まっているほか、スウェーデンも25年から建設工事に着手している。欧州を中心に処分地選定に向けた調査が進行中だ。

他方で、離島を使った高レベル放射性廃棄物の処分は国際的な問題につながる可能性もある。中国が〝難くせ〟をつけて処分場建設に反対する国際世論の形成に動く可能性もありうるからだ。中国は福島第1原発事故に伴って発生した処理水の海洋放出をめぐり、日本産の水産物輸入を禁止するなどの措置をとった経緯がある。

政府は25年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発を再生可能エネルギーとともに「最大限活用する」方針を掲げる。再稼働や新増設に向け、核のごみの議論は避けて通れない。現在は各地の原発にあるプールで使用済み核燃料を保管しているが、空き容量は少なくなっている。青森県むつ市の中間貯蔵施設も、あくまで一時保管という位置付けだ。

南鳥島は沖合で、レアアース試掘の政府プロジェクトが開始されたことでも注目されている。中国政府はレアアースを軍民両用(デュアルユース)製品の日本や米国向けの輸出規制の強化に向けた動きを見せているため、経産省も南鳥島沖で内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に参画し、水深約6千メートルにある海底からレアアース泥の回収試験を始めた。試験結果も良好で、経産省は商業採掘の開始目標を30年頃としている。

中国のレアアース埋蔵量は世界全体の5割弱で採掘量は7割弱、精錬量は9割超を握る。レアアースは防衛装備品や電気自動車、風力発電施設などの電子部品の製造に不可欠な戦略物資だ。環境省も使用済み自動車や電子スクラップのリサイクルでレアメタル回収の政策を進めている。南鳥島はいま、日本の戦略上の重要拠点になりつつある。

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