プロジェクト下水道(4) 元・東京都下水道局/長岡技術科学大学/東京設計事務所 藤田 昌一 デザインマンホール再考
付き合いマンホール
下水道のマンホール(以下、MH)の蓋に地域の特徴や個性的なデザインを描いたデザインマンホール蓋(以下、デザインマンホールぶたDMB)が全国各地で見られるようになった。「路上のアート」とも呼ばれ、下水道のイメージ向上や理解を深めることを目的としているそうだ。
だがDMBから、どことなく下水道事業を実施している自治体の熱意に差が感じられるのはなぜだろう。
市役所の付近や駅前、繁華街などでは見かけても、街の中で見かけることが少ないこともある。
駅前に一つ置いただけで、いちおうわが町もやってます、と言っているようだ。観光客向けに「付き合い」でやっているようにも見える。
スリップ防止の工夫
DMBに描かれている模様や絵には、凹凸が少ないので表面でスリップしそうなものもある。だから老朽化したDMBを交換するときには、耐スリップ型のブチブチ模様の堅実なデザインのMH蓋(以下、ブチブチぶたBBB)に切り替えて実用を優先している都市も出始めている。DMBの危機である。
そこで提案がある。どれもが50年ほどかけて完遂する遠大な計画である。今からどちらにするかハッキリ方針を決めておきたい。
世界遺産になる
例えば「ミシュラン・グリーンガイド」のような世界的に有名な観光案内書に「日本では全ての都市に独自のDMBがある。富士山、スカイツリー、あべのハルカスなど上ばかり見ていないで足元を鑑賞するのも日本観光の大事なポイントである」と書かれるくらいに、全国津々浦々全てのMHの蓋をDMBにしてしまうのだ。そうするとライトアップや巨大噴水にも匹敵するような経済波及効果が期待できる。
もちろん、ギネスや世界遺産への登録も目指す。みんなが注目しているので、DMBに企業の広告を載せようとしている都市もある。
DMBからBBBへ
このように、DMBをもっと盛大に普及しようという考え方とは別な考え方もある。下水道の存在をアピールする定量的評価もないままで、時にはお祭り騒ぎ的になっているDMBを順次BBBに交換したらどうかというのが第2の提案である。
DMBは、シンボル的に一部を残すものの、大部分のMHをBBBにして、それを日本中に展開するのだ。ブチブチの模様はメーカーによって少しずつ異なるけれども、ほぼ全面がブチブチになるようにデザインを統一しておけばよい。
そうすると日本中で「全面ブチブチのMH蓋は全て下水道」ということになる。下水道以外にもブチブチが多少あるけれど、それを観光客が下水道だと誤解しても実害はない。これで下水道の認知度と存在感は十分発揮されるだろう。子どもが転ぶとか、ベビーカーや車椅子がガタつくなどに対応した、市民を守る歩道型BBBもあるのでそれを広めてゆく。
MH削減
もう一つは、広くMH全般にわたる提案である。昔と違って下水道管内にはテレビカメラやロボットが入るので、人間が入ることを前提にした「マンホール」を止めて小型の「マシンホール」とする。マシンホールにはBBBを用いる。
だが要所要所では人が入らなければならないので、これからのMHは100メートルに1カ所ぐらいにして、酸素ボンベを付けた人でも入れるくらいの大型の蓋つきMHに改造する。こちらは大型で目立つのでDMBとする。
以上、DMBとBBBの役割分担と、MHの統廃合・重点化の提案である。
今まで何となく続けてきたことを、そろそろ振り返って方向づけを考え直してもよいのではなかろうか。