強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 羽原巧治

東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治

1 はじめに

東京の下水道事業は明治時代の神田下水の建設に始まり、その後、昭和39年の東京オリンピック大会の開催に向けて、昭和30年代から本格的に整備を進め、昭和45年の公害国会で水質汚濁が問題になって以降、さらに急伸した。その結果、平成6年度末に区部では下水道普及率が100%概成し、現在では東京とシドニーを往復する距離に相当する、約1万6200キロメートルにも及ぶ膨大な延長の下水道管を管理している。

区部の下水道管は、昭和30年代からの高度経済成長期以降に整備されたものが多く、法定耐用年数50年を超える下水道管延長は、今後も増加傾向となる。下水道管の老朽化は、下水道の本来機能に支障をきたすだけでなく道路陥没の原因となり、交通障害などの都市活動に影響を及ぼすおそれがある。

一方、水再生センター・ポンプ所などについては、大正11年に日本で最初の下水処理施設「三河島汚水処分場」が運転を開始して以降、順次整備が進められ、現在では10処理区において、98施設が稼働している。このうち、約5割が稼働してから50年を経過しているが、既存施設の造り替えは大規模な工事となり、多額の事業費や長期の整備期間に加え、水処理や雨水排除の能力を補完する施設の整備が必要となる。

東京都下水道局(以下、「当局」という)では、将来にわたり安定的に下水を処理する機能や雨水を排除する機能などを確保するため、老朽化した下水道管や水再生センター・ポンプ所などに対し、点検や調査に基づく補修などを行うことにより、施設の機能を維持しつつ、老朽化対策とあわせて雨水排除能力の増強や耐震性の向上などを図る再構築を計画的に進めている。

本稿では、当局の再構築事業の事例について紹介する。

2 下水道管の再構築

2・1 取組方針

下水道管のリニューアルとあわせて機能向上を図る再構築を計画的に推進するとともに、災害時等においても下水道の機能を確保するため、バックアップ機能を確保する。また、下水道管の清掃、点検・調査、補修等のメンテナビリティの向上を図る。

枝線の再構築は、整備年代が最も古い都心部である第一期再構築エリアにおける再構築および維持管理の実績を踏まえ、中長期的な事業の平準化等を図るアセットマネジメント手法※1を活用し、経済的耐用年数(100年程度)※2で効率的に再構築を推進する(図1、2)。また、第一期エリアの約8割の地域で再構築が完了しており、第一期エリアに次いで整備年代の古い第二期エリアの再構築に着手する(図3)。さらに、計画的な点検・調査と調査結果に基づく迅速な補修等により、再構築の実施に至るまで下水道管の健全性を維持するとともに、再構築後も継続的な維持管理により、下水を流すなどの機能を確保する。

幹線の再構築については、区部の430幹線(約1100キロメートル)のうち、調査に基づき対策が必要な121幹線(約300キロメートル)の再構築を優先して進める。再構築にあたっては、水を流しながら下水道管を内側からリニューアルする更生工法や補修を組み合わせて実施する。

また、水位が高い8幹線では、再構築に先行して下水の流れを切り替える5つの代替幹線(千代田幹線、新番長幹線、駒形幹線、京島幹線、町屋幹線)の整備を推進する(図4、5、6)。

2・2 取組状況

枝線の再構築は、第一期再構築エリアの総面積約1万6300ヘクタールのうち、令和7年度末までに1万3325ヘクタールの整備を完了している。現在は、当局の事業運営の指針である経営計画2026において、第二期エリアの再構築に着手し、第一期エリアとあわせて令和8年度から12年度までの5年間で3400ヘクタールの再構築を進める。

幹線の再構築については、令和7年度末までに計画延長300キロメートルのうち、約121キロメートルの整備を完了しており、5年間の整備目標を25キロメートルとして事業を推進している。

また、大規模な災害等に備えたバックアップ機能の強化を積極的に推進するために、圧送方式の幹線では、複数系統化に着手する。さらに、下水道機能が停止した際に影響が大きい幹線について、新たな代替幹線や連絡管等の検討に着手する。

2・3 整備効果

第一期再構築エリアにおいて、令和7年度までに同エリアの面積の約8割について再構築が完了した結果、第一期再構築エリア全体の平均経過年数は29年となり大幅に若返りが図られている。同エリアの下水道管の破損などに起因する道路陥没件数は9割以上減少しており、対策による効果が確認できる(図7)。

3 施設(水再生センター・ポンプ所)の再構築

3・1 取組方針

区部の水再生センター・ポンプ所などについては、定期的な点検、調査に基づく補修や大規模改築等により施設の機能維持を図る老朽化対策を実施するほか、施設の状況に応じて耐震性の向上を行う。また、工事期間中においても、水処理施設や流入きょ等の必要な能力を確保する代替施設を整備する。代替施設を整備することで、水の切り替えを容易にし、処理能力等に余裕を持たすことで、メンテナビリティの向上を図るほか、災害等により一部の施設が壊れた際にも、水処理機能等を維持するバックアップ機能も確保する(図8)。

3・2 取組状況

芝浦水再生センターや東尾久浄化センターなどにおいて、老朽化対策とあわせてメンテナビリティの向上や耐震性の向上等を図る再構築を実施している。芝浦水再生センターにおいては、水処理施設の再構築にあたり、狭隘な敷地内で作業するスペースを確保しながら、段階的に整備を進めており、水処理機能を安定的に確保しつつ、耐震性や処理水質の向上などを図っている。

また、東尾久浄化センターでは、老朽化が進行している三河島水再生センターの再構築を見据え、流入する下水を切り替えるため、町屋幹線の整備を行うとともに、処理水質を向上させるため、水処理施設の整備を行う予定である(図9)。

4 今後の展望

下水道は、日々の暮らしや経済活動によって汚れた水を浄化し、川や海に戻すことで、快適な生活環境と都市の水循環を支えており、都民生活や東京の都市活動になくてはならない重要なインフラである。

下水道管の老朽化による道路陥没の発生などは、お客さまの生命や財産、都市活動にも大きな影響を及ぼすため、引き続き下水道施設の再構築を計画的に行っていく必要がある。

東京都下水道局は、都民の安全を守り、快適な生活を支えるため、将来的な人口減少や気候変動などの社会経済情勢の変化を見据え、事業のより一層の効率化、利便性の向上に取り組み、下水道サービスのさらなる向上を図る対策を推進していく。

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東京都 下水道 計画調整部 計画推進担当課長 羽原 巧治=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図1 下水道管の経済的耐用年数
図1 下水道管の経済的耐用年数=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図2 下水道管のアセットマネジメント(イメージ)
図2 下水道管のアセットマネジメント(イメージ)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図3 枝線再構築エリアと平均経過年数
図3 枝線再構築エリアと平均経過年数=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図4 代替幹線整備の複数系統化等のイメージ
図4 代替幹線整備の複数系統化等のイメージ=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図5 代替幹線の役割
図5 代替幹線の役割=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図6 都が進める代替幹線
図6 都が進める代替幹線=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図7 再構築整備率と道路陥没件数の推移(第一期再構築エリア)
図7 再構築整備率と道路陥没件数の推移(第一期再構築エリア)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図8 施設再構築のイメージ
図8 施設再構築のイメージ=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京都における下水道管および処理施設の再構築の展開 東京都 下水道局 計画調整部 計画推進担当課長 羽原巧治_図9 東尾久浄化センターの整備
図9 東尾久浄化センターの整備=クリックで拡大=

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