強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都 山根由紀子

東京都下水道局総務部企画調整課長
(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務)
山根由紀子

1 はじめに

東京都下水道局(以下、「当局」という)では、これまで培った技術力や経営ノウハウなどの強みを生かし、東京発の下水道技術の国際展開を進めています。取組の推進にあたっては、関係省庁や国際協力機構(JICA)などの国・政府関係機関とも連携・協力し、東京下水道の技術やノウハウの普及・提供を進めるとともに、政策連携団体である東京都下水道サービス(TGS)と連携し、海外諸都市などのニーズに即した取組を一体的に実施しています。

2 下水道技術の国際展開

TGSや民間企業と共同研究で開発したSPR工法や水面制御装置、フロートレス工法などの有用な下水道技術を海外にPRし、国際展開を図っています。

老朽化した下水道管を更生するSPR工法は、平成16年度から海外での施工を開始し、これまでにシンガポールや韓国、アメリカなど21の国と地域で施工されています。また、雨天時に合流式下水道の吐口から河川などへ放流されるごみの流出を、動力を使用せずに抑制する水面制御装置は、平成23年度に海外での設置を開始し、ドイツやフランスなど4カ国で設置されています。

3 人材交流の促進

海外政府や自治体等からの視察の受入れなどを通じて、東京下水道の技術やノウハウを提供するため、海外とのネットワーク強化を推進しています。令和7年は水再生センターなどの当局施設で26の国と地域から、913名の視察を受け入れました(写真1)。また、JICAとの連携を強化し、研修講師として参画するなど、海外政府や自治体等の実務に携わる職員を対象とした研修を実施するほか、インドネシアに職員の派遣を行っています。

また、関係機関と連携し、施設の建設や維持管理、下水道の事業運営に関するノウハウなどを生かして、下水道施設が未整備または整備されていても十分に機能が発揮されていない国や地域の課題解決への貢献に向けて、取組を推進しています。

このほか、ニューヨーク市とは令和6年11月に都市インフラに係る両都市間の協力について、合意書(MOU)を締結し、技術交流を進めております。令和7年7月には「下水道管の維持管理・再構築、下水道管のメンテナンス等」をテーマに、地下埋設物の情報共有やマッピング、民間事業者との連携などに関する意見交換を行いました。今後も継続的な交流を図っていきます。

4 人材育成の推進

国際会議・展示会等の参加を通じて、国際感覚の涵養や知識の習得などを推進しています。水環境分野の主要な国際会議であるWEFTEC(米国水環境連盟年次総会)やIWA(国際水協会)等の国際会議へ参加し、英語での論文発表や設置ブースで都の施策の展示・説明を行うほか、海外現地調査として海外自治体等を訪問し、下水道に係る先進事例について視察や意見交換などを行う予定です(写真2)。

5 SusHi Tech Tokyo2026等への参画

東京都では、令和8年4月27日(月)から4月29日(水)まで、東京ビッグサイトで、アジア最大のグローバルイノベーションカンファレンス「SusHi Tech Tokyo2026」を開催しました「SusHi Tech Tokyo」とは、Sustainable High City Tech Tokyoの頭文字で、テクノロジーなどを通じて、「持続可能な新しい価値」を生み出し、東京から世界に発信していきたいという思いが込められています。

当局は、レジリエンスをテーマとしたエリア「Focus on Resilience」内で、4月27日(月)および4月28日(火)のビジネスデイではSPR工法の模型を中心に、4月29日(水)のパブリックデイでは水面制御装置の模型を中心に、東京下水道の技術を紹介するパネルやモニターを展示しました(写真3)。

SusHi Tech Tokyo 2026の開催期間に合わせて実施されたG―NETS首長級会議の一環として、令和6年4月29日(水)、千代田幹線の視察受入を行いました(写真4)。「GNETS(Global City Network for Sustainability)」は、世界の共通課題の解決に向け、都が2022年に立ち上げた国際都市ネットワークです。

当日は、オーストラリア・モートンベイ市から3名、台湾・新北市から3名が参加しました。当局からは、都における老朽化施設の再構築事業の取組や、既存幹線の水位が高く再構築が困難な区間において、先行して下水の流れを切り替え水位を低下させるため、その流下機能を代替して担う千代田幹線の役割・特徴について説明を行うとともに、実際に幹線内部の見学を実施しました。

視察参加者からは、施設の構造や維持管理手法、再構築に係る技術的工夫などについて多くの質問が寄せられ、都の下水道事業に対する高い関心が示されました。今回の視察を通じて、都市のレジリエンス向上に資する下水道インフラの重要性について認識を共有するとともに、各都市との技術的知見の交流を図りました。

6 モンゴル国・ウランバートル市における人材育成

モンゴル・ウランバートル市の下水道管網は、老朽化や侵入水等が多く発見されていることから、既存下水道管の計画的な更新が急務となっています。ウランバートル市上下水道公社(USUG)の職員が適切な維持管理を実施できるよう支援するため、下水道管の維持管理・更新に関する人材育成事業について、JICAの「草の根技術協力事業」に提案し、令和5年3月に採択されました。事業実施については、実施団体として指定したTGSがJICAとの間で業務委託契約を締結し、令和6年6月から事業を開始しています(写真5)。本年は事業の最終年に当たり、下水道管の点検・調査、更新に関する技術支援の成果を確認するとともに、現地職員の技術力向上を通じて、持続的な課題解決につなげていきます。

7 シンガポール国際水週間への参加

令和8年6月にシンガポールで開催された水分野に関する国際会議「シンガポール国際水週間2026」に、水道局と連携して展示会にブース出展を行い、東京都の水道・下水道技術のPRを実施しました(写真6)。

主要プログラムである公益事業者CEO円卓会議には、相田佳子下水道局次長が出席し、上下水道事業のAI/DX化について当局の取組を発信するとともに、世界各都市の上下水道事業者のCEOと意見交換を行いました。

8 今後に向けて

今後も、東京下水道の技術の国際展開を推進するとともに、国際的な人材交流や人材育成を積み重ね、東京の優れた技術等について積極的にプロモーションを実施していくことで、東京下水道のプレゼンス向上につなげていきます。

強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_東京都 下水道局 総務部 企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根 由紀子
東京都 下水道局 総務部 企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根 由紀子=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真1 海外からの視察者(芝浦水再生センター)
写真1 海外からの視察者(芝浦水再生センター)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真2 国際会議での論文発表(IWA)
写真2 国際会議での論文発表(IWA)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真3 SusHi Tech Tokyo2026
写真3 SusHi Tech Tokyo2026=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真4 千代田幹線視察
写真4 千代田幹線視察=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真5 管きょ敷設工事の現場視察
写真5 管きょ敷設工事の現場視察=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の国際展開 東京都下水道局総務部企画調整課長(企画・国際展開担当課長・女性活躍推進担当課長兼務) 山根由紀子_写真6 シンガポール国際水週間2026
写真6 シンガポール国際水週間2026=クリックで拡大=

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