サーキュラーエコノミー実現を目指して【第2部】~CLOMAの挑戦~(12) サントリー 浅木 氏 「日本型資源循環モデル」国際社会へ
サントリーホールディングス常務執行役員サステナビリティ経営推進本部長 CLOMA国際連携部会 部会長 浅木 純氏
CEは産業競争力と資源安全保障を支える基盤に
プラスチックによる海洋汚染や気候変動への対応が世界共通の課題となる中、サーキュラーエコノミー(CE)の実現に向けた国際的な議論が加速している。こうした中、プラスチック資源循環を推進するクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)では、国際プラスチック条約への対応やアジア諸国との連携、日本の資源循環モデルの発信などを担う「国際連携部会」を設置し、官民連携による活動を展開している。部会長を務めるサントリーホールディングス常務執行役員サステナビリティ経営推進本部長の浅木純氏に、CLOMAが目指す国際連携の姿や、日本型CEの可能性などについて聞いた。
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――CLOMAに参画する意義は。
飲料メーカーである当社は、ペットボトルというプラスチック容器を使用する企業として、資源循環には真正面から向き合う責任があると考えてきた。ただ、資源循環は一企業だけでは実現できない。使用済み容器を消費者が適切に分別、自治体や回収事業者が回収し、リサイクラーが再資源化して、素材メーカーが再生樹脂を供給し、それをブランドオーナーが製品として市場へ戻す。こうしたサプライチェーン全体がつながって初めて循環は成立する。
当社では以前からペットボトルの「ボトルtoボトル(BtoB)」水平リサイクルを推進してきたが、その過程で強く実感したのは、「競争」と「協調」を分けて考える必要があるということだ。その意味で、業種や立場を超えた企業が集まり、共通課題を議論し、社会実装へ向けた方向性を共有できるCLOMAは非常に意義のある組織である。
――部会長を務める国際連携部会の役割は。
国際連携部会は、CLOMAの活動を国内にとどめず、世界へ広げていく役割を担っている。現在の部会の活動としては、まずは国際プラスチック条約への対応がある。産業界として会員企業の意見を集約し、日本政府への提言や情報共有を行っている。また、アジア諸国との交流も進めている。特にインドネシアなど東南アジアとの対話を進め、日本の制度や技術、資源循環の考え方を紹介するとともに、それぞれの国が抱える課題についても学び合っている。
そして、日本型資源循環モデルを国際社会へ発信することが使命だととらえている。日本では、自治体、市民、企業が長年協力しながら分別収集やリサイクル制度を築き上げてきた。その経験は、これから循環型社会の構築を目指す国々にとっても参考になる部分が多い。もちろん、日本の制度をそのまま海外へ当てはめることはできない。しかし、それぞれの国情に応じて応用できる知見は数多くある。そうした経験を共有しながら、世界全体の資源循環を前進させることが国際連携部会の大きな役割である。
――日本型資源循環モデルの強みは。
日本では、長年にわたり行政、企業、市民がそれぞれの役割を担いながら資源循環システムを構築してきた。容器包装リサイクル制度の下では、自治体が分別収集を行い、市民が適切に分別・排出し、事業者が再商品化を担うという役割分担が定着している。この積み重ねが、高品質な資源回収を可能にし、世界でも高い水準のリサイクルシステムにつながっている。
ペットボトルについても、日本では回収率が世界トップクラスにあり、BtoB水平リサイクルも着実に拡大している。これは、高品質な使用済みペットボトルを安定的に回収できる仕組みがあって初めて成立するものであり、社会全体が資源循環に参加している日本ならではの強みと言える。
――サントリーでは、早くからBtoBに取り組んで来たが。
CEの考え方では、単に「リサイクルする」ことが目的ではなく、資源の価値をできるだけ維持しながら循環させることが重要である。その観点から見ると、BtoB水平リサイクルには大きな意義がある。使用済みペットボトルを再びペットボトルへ戻すことができれば、新たな化石資源の使用を抑えながら、高品質な容器を繰り返し利用できる。これは、資源循環と温室効果ガス排出量削減の両面で大きな効果が期待できる取り組みである。
私はBtoBを通じて、CEは「技術」ではなく、「社会システム」であることを改めて実感している。優れたリサイクル技術があっても、回収される資源の品質が低ければ循環は成立しない。分別回収が徹底されても再生材の需要がなければ資源は循環しない。社会全体が一つのシステムとして機能することが何より重要なのである。
――CEについてどう考えているか。
これまでの3Rなどは環境問題への対応という側面で語られることが多かったが、CEはそれだけではないと考えている。近年は地政学的なリスクの高まりやエネルギー価格の変動などを受け、資源の安定確保そのものが世界的な課題となっている。日本は資源の多くを海外に依存している国であり、必要な資源をいかに効率的に利用し、国内で循環させるかという視点は、今後ますます重要になる。
また、従来は「環境対策はコスト」という見方もあったが、現在は資源循環に取り組むことが企業価値の向上や競争力強化にもつながる時代になってきている。その意味では、CEは環境政策であると同時に、産業政策であり、成長戦略でもあると捉えている。
――CLOMAが今後目指すべき方向は。
現在、世界では気候変動、生物多様性、資源循環など、さまざまな環境課題が複雑に関係し合っている。こうした課題は、一つの企業、一つの業界、一つの国だけで解決できるものではない。だからこそ、企業同士が競争すべき領域と協調すべき領域を整理し、知見や技術を持ち寄る「コレクティブ・アクション」の考え方が一層重要になる。CLOMAはまさに、その協調領域を担うプラットフォームである。異業種の企業が集まり、行政や研究機関とも連携しながら、社会全体で資源循環を前進させていく。この枠組みは今後さらに重要性を増していくと考えている。
日本がこれまで培ってきた「行政・企業・市民がそれぞれ役割を果たしながら資源を循環させる仕組み」は、世界に誇ることのできる財産である。その経験を共有し、それぞれの国情に応じた形で発展させていくことが、日本に期待される役割だと考えている。
(聞き手・黒岩修)
〈第2部終わり〉