環境価値を効率的にクレジット化 岐阜県恵那市と日本ガイシなど3社

岐阜県恵那市、日本ガイシ、リコーおよびIHIは来月から、地域新電力の恵那電力(同市)が再生可能エネルギーによる発電および売電事業を通じて同市が得た環境価値をクレジットに変換し利用する「脱炭素・経済循環システム」の実証事業を開始する。リコーとIHIのデジタル技術やIoT技術を活用し、クレジット化までの手続きを効率化する。創出されたクレジットを市内で活用するほか、市外からの資金還流を生み出す仕組みも構築し、地域経済の活性化やさらなる再エネ導入拡大のサイクルを回し、同市のゼロカーボンシティ実現に貢献していく。同システムを確立し、全国の自治体のモデルケースとしていく方針。

恵那電力は昨年4月、日本ガイシ、恵那市および中部電力ミライズにより設立され、今年4月から事業を開始している。太陽光発電設備と電力貯蔵用NAS電池を自社で保有。FIT制度を利用しない自立した再エネの活用や経営の安定性、自然災害への対応力強化などを特徴とする「恵那モデル」により、エネルギーの地産地消によるゼロカーボンシティの実現を目指している。

再エネの自家消費によるCO2削減等の環境価値を生成・取引する仕組みはこれまでもあったが、データの収集や各種書類による申請などアナログで煩雑な作業が発生し、手続きに時間がかかる課題があった。

そのため、日本ガイシとリコーは今年4月から、恵那電力の再エネの発電から消費や余剰発電の電力貯蔵用NAS電池への充放電も含めた全プロセスをブロックチェーン技術でトラッキング(追跡)する実証事業を開始。これにより、恵那市の公共施設で発電され自家消費された再エネ電力の消費がトラッキングされ、CO2削減量として市が保有する環境価値とみなされる。

今回開始する実証事業では、この環境価値を、IHIが開発した「環境価値管理プラットフォーム」によりJ‐クレジット制度を通じてクレジット化する。

このプラットフォームは、カーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、IHIのIoT基盤である「ILIPS」等を通じて取得した装置や設備の稼働データからCO2排出/削減量を算出し、ブロックチェーン技術を用いて記録されたデータの可視化および環境価値としてトークン(証拠)化するもの。同プラットフォームを活用した自治体との共創活動は今回が初めてとしている。

クレジット化された市保有の環境価値は、市内の事業者や生産者に売却することで、環境価値が付加されたカーボンオフセット商品の創出を促進し、SDGs未来都市に選定された恵那市の環境ブランド力の向上に役立てる。将来的には、同事業を通じて得た市外からの資金還流を原資に、さらなる再エネ導入や省エネ化の促進につなげ、環境・経済の好循環スキームの確立を目指す。