強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣

1 「東京都下水道事業経営計画2026」の策定

東京都下水道局では、施設の老朽化対策や激甚化する豪雨への対応、首都直下地震に備えた震災対策、地球温暖化対策など、下水道事業を取り巻く課題に的確に対応し、施策を着実に推進するため、令和8年度から令和12年度までの5年間を計画期間とする「経営計画2026」を令和8年3月に策定いたしました。経営計画2026では、「強靭な下水道の構築」「脱炭素・良好な水環境への貢献」「持続可能な経営基盤の確立」の3つの柱を掲げ、取組を推進していくこととしています。

2 経営計画2026期間中の財政運営

3つの柱の一つである「持続可能な経営基盤の確立」を実現していくためには、公営企業の経営の原点である公共性と経済性を最大限発揮し、最少の経費で最良のサービスを安定的に提供していくことを目指して不断の経営効率化に努め、持続可能な財政運営に取り組むことが重要です。

都では、区部と多摩地域で下水道事業の実施主体や財政の仕組みが異なります。ここからは、区部と多摩地域それぞれの財政運営について、財政収支や経営計画2026で掲げた取組方針等を紹介します。

2・1 区部の公共下水道事業

区部では、都が市町村の立場で公共下水道を管理しています。区部の公共下水道事業は、雨水の排除に要する経費は一般会計負担、汚水の処理に要する経費は下水道料金負担とする「雨水公費・汚水私費の原則」を踏まえて財政運営を行っています。

まず収入面ですが、経営財源の中心である下水道料金収入は、コロナ禍の減収からは回復してきたものの、使用者の節水意識の向上等による小口化の進展などから、今後の大幅な増加は期待できない状況です。

一方、支出面では、これまでもコスト縮減等に取り組んできましたが、労務単価、資材価格、電気料金等の上昇により、下水道施設の維持管理や建設改良に必要な経費は増加しています。また、老朽化した施設の再構築や浸水対策、震災対策など、多くの課題に対応した施策を着実に推進するための事業費を確保する必要があります。こうした厳しい経営環境から、区部の財政収支(収支差引過不足額)は、この5年間マイナスで推移することを見込んでいます(表1)。

計画の初年度にあたる令和8年度予算については、収入面では、下水道料金1707億円、企業債1600億円、一般会計繰入金1348億円など、合計5644億円を見込んでいます。支出面では、維持管理費1736億円、建設改良費2920億円など、合計5662億円を見込んでおり、その結果、収支差引過不足額はマイナス18億円、累積資金過不足額は104億円となる見込みです。

支出のうち、建設改良費については、物価上昇等を反映した必要な事業費を見込むとともに、下水道施設の強靭化や脱炭素の取組等を集中的に進めていくため、前年度予算より555億円増額させるなど投資を拡充しており、計画期間5年間では1兆5550億円の投資を計画しています。建設改良事業の実施に必要な財源として、国費の確保に努めるとともに、これまで残高の縮減に努めてきた企業債を積極的に活用し資金を確保します。

2・2 多摩地域の流域下水道事業

多摩地域の下水道は、都が管理する流域下水道と、市町村が管理する公共下水道がひとつのシステムとして機能を発揮しています。

多摩地域の流域下水道事業は、維持管理に要する経費は、受益者である市町村からの維持管理負担金によって賄われており、建設改良費は国費を除き、原則、都と市町村で折半して負担しています。

収入面では、維持管理負担金収入は、多摩地域の下水道普及率がすでに99%を超えているため、今後、流入水量の大幅な増加による収入増は見込めない状況です。

一方、支出面では、これまで省エネ機器の導入等、企業努力による経費削減を続けてきましたが、労務単価、資材価格、電気料金等の上昇により、維持管理に必要な経費が増加しています。その結果、近年、維持管理収支は赤字で推移しており、令和7年度予算において累積資金の不足が見込まれました(表2)。

こうした状況から、今後も多摩地域の安全で快適な暮らしと良好な水環境を守るため、安定した事業運営に向けて、令和8年4月より、維持管理負担金の流入水量1立方メートル当たりの単価を改定前の38・698円から54・241円に改定いたしました。

令和8年度予算において、収入面では、単価改定を踏まえた維持管理負担金収入256億円(前年度予算より69億円増額)など、合計539億円を見込み、支出面では、維持管理費260億円、建設改良費209億円、市町村下水道事業費41億円など、合計531億円を見込んでいます。その結果、収支差引過不足額は8億円のプラス、累積資金過不足額はマイナス23億円となる見込みです。

市町村に丁寧に説明を行い維持管理負担金の単価改定を行ったところですが、それとともにコスト縮減の徹底を継続することにより、収支の改善と、計画期間末において資金不足の解消を図るよう取り組みます。

また、流域下水道の建設改良費においても、下水道施設の強靭化や脱炭素の取組を計画的に進めるため投資を拡充しており、前年度予算より4億円増額させるなど、計画期間5年間では1440億円の投資を計画しています。その財源として、引き続き国費の確保に取り組みます。

3 持続可能な財政運営に向けた企業努力の取組

将来にわたり安定的に下水道機能を確保するため、適切な維持管理と計画的な再構築に取り組んでいきますが、それを財政面から支えるため、建設・維持管理コストの縮減や、資産等の有効活用による収入の確保にも積極的に取り組んでいくことが重要です。今回の計画では、5か年で総額860億円の企業努力に取り組むこととしています(表3)。

3・1 建設・維持管理コストの縮減

まず、コスト縮減については、これまで当局が培ってきた知識や経験を活用しながら、新たな技術を導入すること等により、建設・維持管理コストの縮減に取り組みます。

建設コストの縮減では、例えばアセットマネジメント手法を活用した設備の再構築として、電気設備や機械設備の補修を計画的に行い、法定耐用年数を超える経済的耐用年数により再構築することで、ライフサイクルコストを縮減します。

また、維持管理コストの縮減では、エネルギー自立型焼却炉等の導入や、省エネルギー型機器の導入、再生可能エネルギーの活用によって、電気料金の縮減などに取り組みます。

さらには、AIを含むデジタル技術を活用して新たな技術の開発・導入を進めるなど、更なる事業の効率化に取り組みます。

3・2 資産等の有効活用

次に収入確保の取組として、下水道施設の上部空間の活用、土地・建物の貸付けや売却、下水熱の利用など、資産や資源の有効活用に積極的に取り組みます。

具体的には、例えば「常盤橋街区再開発事業」では、東京駅日本橋口前の常盤橋街区での再開発プロジェクトに地権者として参画し、地区全体のまちづくりに貢献します。令和4年度には、老朽化したポンプ所の再構築が完了し、その上部を下水道事務所や研修所等として活用しています。さらにポンプ所に隣接する再開発ビル「Torch Tower(トーチタワー)」(写真)が令和10年度に完成した後は、保有する権利床を民間事業者に貸し付け、収入を確保していく予定です。

4 東京下水道の持続可能な財政運営

「持続可能な経営基盤の確立」に向けては財政面だけでなく、事業の継続的な運営に資する人材確保に向けた取組を強化するほか、AI等の先端技術の積極的な活用も含め、BPR(業務プロセスの最適化)を徹底するなど、DXによる仕事の進め方の見直しを進めていきます。さらに、効率的な施設の運転管理を支援する技術や、機器点検、保全管理の省力化技術など、新たな技術開発にも取り組みます。

新たな経営計画に基づく事業を推進していくため、収入の動向や物価上昇など下水道事業の経営を取り巻く様々な状況変化にも適切に対応しながら、中長期的な視点をもって、持続可能な財政運営を進めていきます。

強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣_東京都 下水道局 総務部 理財課長 大道 竜嗣
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強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣_表1 区部下水道事業の財政収支計画(「経営計画2026」)
表1 区部下水道事業の財政収支計画(「経営計画2026」)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣_表2 流域下水道事業の財政収支計画(「経営計画2026」)
表2 流域下水道事業の財政収支計画(「経営計画2026」)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣_表3 企業努力計画額(令和8~12)
表3 企業努力計画額(令和8~12)=クリックで拡大=
強靭で持続可能な東京下水道へ 東京下水道の持続可能な財政運営 東京都下水道局総務部理財課長 大道竜嗣_写真 常盤橋街区再開発事業
写真 常盤橋街区再開発事業=クリックで拡大=

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