2025年 我が社の環境ビジネス戦略 環境システム 代表取締役 鮎川 和泰 氏 SBT認証を取得し、科学的根拠に基づく脱炭素化推進へ
好評「水質計のサブスク」にアナリストサポートを
――昨年のニュースは。
「SBT(Science Based Targets、パリ協定が求める水準と整合した企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)認証」を取得した。海外と取引がある関係でカーボンニュートラルの話題を耳にする機会は国内以上に多く、科学的根拠に基づいた具体的な目標を設定するSBT認証取得について大変興味があったので申請書を整えて提出し、2024年11月に無事認証を取得できた。事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量の削減が求められるSBTは、単に物品を販売するのではなく、顧客の需要と供給に合わせたサービスを提供するという観点から、私たちが2020年から始めた「水質計のサブスク」の考え方ととても親和性が高いと考えている。

――「水質計のサブスク」とは。
現地で観測された河川や海洋などの「水質データ」を、乾電池駆動のLTE通信機を経て、同時に提供するクラウドへ自動転送するサービス一式である。顧客と当社が、スマホやパソコンからデータを閲覧共有できるパッケージサービスとなっている。計測したい水質項目別に、利用期間中は毎月の金額が定額で、機材の破損についてもその定額費用内でカバーするという新しいサービスだ。当初は成り立たないなどの声も多かったが、昨年度は当社売上高の30%を超える割合をこのサブスクが占めている。器材を売るのではなく「必要なデータの取得」を提供するサービスなので、顧客の利用期間が終了すると機材は返却され、私たち専門家によって適切に保守された後、新たな顧客へとリユースされる。適切な保守を行うため、機材の故障率が圧倒的に少ない。保守を怠ったために故障し、機材を廃棄せざるを得なくなることが多い従来の水質計測と比較すると、このサービスは脱炭素化にも貢献できていると思う。
――サブスクを始めて良かった点は。
新しい顧客の開拓につながったことが一番だ。この新サービスを開始する前は、水質を観測する顧客の多くは行政の研究機関や大学の研究室だった。だが、手軽に必要な期間だけ、調べたい場所の「水質データを買う」ことのできるこのサービスは、期間が限定される護岸工事中の建設会社をはじめ、すでにたくさんのセンサーを据え付けている上水道施設などでの利用も広がってきている。これは近年の気候変動に伴い水処理方法が今まで通りには行かなくなってきたことも関係しており、設備や処理方法を見直す前に今の状況を把握したいという要望が増えていることから、需要が高まっている。そうした場合にも、最初は関係する全ての項目と、気になる場所の全てにセンサーを設置してデータを観測し、ある程度問題の関連性が把握できた時点でセンサーの数や台数を削減していくことができる。最終的にシンプルな仕組みに集約するために、ベストなサービスだと自負している。
――力を入れている「AI」のメリットは。
お客様のデータを預かる中で非常に重要なのは、どこでどういう項目を調べたら顧客の必要なデータが手に入るのかを正しく選定すること。そこで、調査項目や観測場所の選定のために、AIを利用している。数カ月かけて取得したデータ結果に、気象条件なども含めてクラスター判定を行い、各項目に関連する関係性を比率で表している。もし同じような挙動をする項目があれば、より保守の必要としない方の項目や安価な方の項目を選択することで、将来的な機材コストを削減できる。AIを活用してきめ細かなサポートができていると思う。
――2025年の展開については。
水質データを解釈するためには一定の化学知識が必要だが、実際の水処理関連施設では経験者が高齢化し、勘に頼る運用に限界が来ているとの話もよく耳にする。弊社では、私を含め大学に研究員として在籍する3人で水質データについての課題や最新の話題などについて議論する研究室ゼミを毎週開催している。最近はこのゼミの中で、お客様からの相談ごとを議論する機会を設けて好評をいただいている。大学に所属する私たちにとって議論は日常的だが、水処理に関わる専門職の方々は相談できる機会が少なく、日々の業務以外の検討を行うことは難しいそうで、話し合う場の提供や報告書の共有がとても有効のようだと感じている。今年度は、サブスクによるデータのご購入に対し、データアナリストサポートも併せて提供し、より価値のあるサービスを構築していきたいと考えている。