エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」+   蛍光管製造禁止に関わる諸問題(1)

不正と不作為と利権

 国際資源戦争から日本の「あかり」を守らなくてはならないという警鐘を発し続けてきたが、先週これを裏付ける統計資料が発表された。 

日本照明工業会の2024年度の出荷台数では、2月までで白熱電球4,600万灯、放電ランプ4000万灯。LED灯合計で2500万灯、LED月産では23万灯で、このうち直管LEDは年間650万灯。27年に蛍光管を製造禁止にする水銀水俣条約の発表が2312月、これを閣議決定したのが2412月なのだから、この出荷のほとんどは景気回復による新築着工への供給ではないかと考えられる。

さて、経産省情報産業課に何度問い合わせても答えが出ない照明の需給バランス問題だが、東京新聞の記事によると蛍光灯は全国に7億灯あるという。通常蛍光管2本で1灯の器具が多いので、仮に14億本の蛍光管があるとする。このうち何割がLEDになっているか誰も把握していない。把握していないけれども、あと2年半で蛍光管は製造禁止になる。蛍光管を点灯させるための安定器は19年に製造終了させてしまっているので、その寿命が来た順に照明は消えていく。その時点で年間650万灯のLED生産能力が全国からの発注を賄うことができなければ、間に合わない施設は停電(不点灯)したままになるのである。

トランプ大統領とレアメタル

ここに2つの巨大な利権行動と国際謀略を紹介する。前回でも触れたが、3月のあのショッキングなトランプ、ゼレンスキー会談でトランプ大統領が「ウクライナのレアメタルを掘って掘って掘りまくれ」と言った背景には、122日のアメリカの半導体規制に対抗した中国のガリウム、ゲルマニウムなど希少金属の輸出禁止がある。

このガリウムはLEDや太陽光パネルの原料となっていて、世界の98%を保有する中国が輸出禁止すると、その国のLED生産はできなくなる。文字どおり、社会基盤の明暗を中国に握られてしまっているのである。ウクライナからガリウムを輸入もできない日本は、尖閣問題や台湾問題などが起きないうちに完全LED化を達成しないとならない。(次回は、4月7日配信予定)越智経歴