食品ロス削減に、クラフトビールで挑戦 Beer the First

Beer the First(横浜市)は、「自然とわたしに美味しい一杯」を目指し、日本各地の廃棄予定だった食材をクラフトビールへアップサイクルする事業を21年から開始した。第1弾として、横浜高島屋地下食料品「ベーカリースクエア」の廃棄間近のパンを原料としたホワイトエールスタイルの「RE:BREAD」を販売。続いて災害備蓄品である「アルファ米」と「乾パン」を原料とした「White Thumb Rice」、「Brown Thumb Kanpan」を発売した。さらに、廃棄される麺から作った「華麺舞踏会 醤油との出会い」を、昨年11月からクラウドファンディングで先行販売を開始した。さまざまな企業と共創し、クラフトビールを通じて食品ロス削減や地域創生に貢献していく考えだ。

坂本錦一代表は事業を始めた経緯について、「縁あって農家や加工所を訪れた際、大切に育てたフルーツを表面に傷が付いているなどの理由で販売できないことがある現実に直面し、自分に何かできないだろうかと考えた。そして好きなクラフトビールを通して食品ロス削減にアプローチできないかと思った」と話す。「クラフトビールを通して社会問題に貢献したい」との思いで学生時代の友人に声をかけ、 一昨年3月に会社を設立した。

「やるからには〝楽しい〟〝美味しい〟が詰まったクラフトビールを作りたい」と、想いに共感してくれる企業とともに、満足のいく品質になるように試行錯誤を重ねながらビールづくりに取り組む。また、東京都が2030年食品ロス半減に向け展開する「フードテックを活用した食のアップサイクル促進事業」に採択され、昨年8月から都との共同事業として同事業を推進している。

「食品ロス削減に取り組むのと同時に、もっと多くの人にクラフトビールの楽しさを知ってもらいたい」とする坂本氏。「飲み会などで〝最初の1杯〟として愛されているビールだが、本当はもっと味わい豊かなビアスタイル(ビールの種類)があって、使用する麦芽の種類やホップの品種、酵母の種類、投下する量などによって、まだ見ぬ未知のビールに出会うことができる」と、さまざまな食材からのビールづくりを模索し、今回行きついたのが国民食として万人から愛される「ラーメン」。製造過程で出る麺の切れ端は従来は廃棄されてしまうが、これをビールづくりに活用した。

ラーメンには醤油、塩、味噌、豚骨などさまざまあるが、「何ラーメンに合うビールにしようかと調べを進めていくと、町のラーメン店や中華料理店、定食屋などを含めて日本で一番馴染みがあるラーメンは醤油ラーメンで、最も好きなラーメンの種類のアンケートでも醤油が1位であることがわかった」ことから、麺から作った「醤油ラーメンに合うクラフトビール」を目指すこととした。そして、日本国内に製麺所が数ある中、ラーメン店主たちから圧倒的な支持を集めている東京都台東区にある製麺所「浅草開化楼」の協力を得ることができた。さらに、醤油ラーメンに合うクラフトビールを考えていく中で、「醤油ラーメンと非常に相性の良いトッピングである〝海苔〟の香りがしたらおもしろいのでは」とのアイデアが出たことから、「山本海苔店」にも協力を依頼し、副原料として使用する海苔を支給してもらうことになった。

こうしてできたビールが、「華麺舞踏会 醤油との出会い」で、ラーメンの麺から作った〝シーウィード(海苔)エール〟。香ばしいモルトのコクに、鼻から抜ける海苔の旨味が、醤油を引き立たせる一杯となっている。本来使用する麦芽の15%を麺で代用した(麦芽比率や使用する副原料の都合上、品目は発泡酒)。発売に際しクラウドファンディングを行ったところ、目標額に対し209%の支援があった。今月から支援者にリターン品としてビールを発送し、3月頃から一般販売を開始する予定となっている。

今後もさまざまな企業とコラボし、さまざまな食材を使ったビールづくりに取り組んでいく。また、「現状は外部委託で製造しているが、できれば年内には自社の醸造設備を立ち上げたい」と準備を進めており、「アップサイクルやわれわれの思いを込めたブルワリー名も検討中」とのことだ。

食品ロス削減に、クラフトビールで挑戦 Beer the First_廃棄される麺から作った「華麺舞踏会 醤油との出会い」
廃棄される麺から作った「華麺舞踏会 醤油との出会い」
食品ロス削減に、クラフトビールで挑戦 Beer the First_「華麺舞踏会」を手にする坂本氏
「華麺舞踏会」を手にする坂本氏
食品ロス削減に、クラフトビールで挑戦 Beer the First_横浜高島屋「ベーカリースクエア」の廃棄間近のパンを原料にしたビールも販売
横浜高島屋「ベーカリースクエア」の廃棄間近のパンを原料にしたビールも販売