自民総裁選 ポスト岸田に進次郎元環境相が急浮上 次期衆院選視野に「世代交代」の切り札 後見人菅前首相が「白羽の矢」
9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選で小泉進次郎元環境相(43)の出馬待望論が急浮上している。8月19日にいち早く出馬表明した〝コバホーク〟こと小林鷹之前経済安保担当相(49)のほか立候補に意欲を示す議員は10人にのぼる混戦模様となっている。しかし派閥の政治資金問題で地に落ちた自民党のイメージを払拭するには、「世代交代」を見せつけるしかないとの声が、次の衆院選のことを見据える議員の中で急浮上。同じ40代の小林氏は知名度が低く、選挙の顔にはならないとの理由で、小泉氏に白羽の矢が立てられたのだ。ただ小泉氏には環境相時代の発言から「ポエム政治家」「政策は何も分からない」と揶揄する声もある。そこで本紙は、小泉氏の実績を検証してみた。(関連記事参照〈リンク〉、小峰純)
総裁選は混戦模様
ポスト岸田の後継候補として名が挙がる11名は次の通りだ(カッコ内は年齢、当選回数、出身派閥の順)。
▽茂木敏充幹事長(68、10回、茂木派)▽加藤勝信元官房長官(68、7回、茂木派)▽高市早苗経済安保相(63、9回)▽小林鷹之前経済安保相(49、4回、二階派)▽小泉進次郎元環境相(43、5回)▽石破茂元幹事長(67、12回)▽河野太郎デジタル相(61、9回、麻生派)▽林芳正官房長官(63、参院5回・衆院1回、岸田派)▽上川陽子外相(71、7回、岸田派)▽斎藤健経産相(65、5回)▽野田聖子元総務相(63、10回)。
このうち立候補に必要な推薦人20人を確保あるいはほぼ確実なのは、19日時点で河野太郎、茂木敏充、小林鷹之、小泉進次郎、石破茂の5氏だ。
総裁選の候補として名があがる議員には出身派閥の重複もみられる。麻生派以外の5派閥は政治資金問題で解散を決めたものの、出身議員同士が勉強会の名目で集まることも多く、派閥の影響力が完全になくなったわけではない。茂木派の茂木敏充氏と加藤勝信氏が重なり、岸田派の林芳正氏と上川陽子氏もあてはまり、推薦人集めで出身派閥の競合も起きている模様だ。
男系天皇の維持や選択的夫婦別姓など保守的な政策が似る小林鷹之氏と高市早苗氏も競合する。高市氏が初めて出馬した21年の前回総裁選では小林氏は推薦人に名を連ねていた。
次期衆院選や来夏の参院選を見据え、世論の人気が高い候補を当てにする選挙基盤の弱い議員の支持も重なり合う。各種世論調査で上位の常連である石破茂氏、小泉進次郎氏、河野太郎氏の結集は今回の総裁選では見通せず、3候補への支持は予備選では分散しそうだ。21年の総裁選に出馬した河野氏は、予備選から石破、小泉両氏の支持を受け「小石河連合」と呼ばれた。
しかし派閥の政治資金問題で自民党の支持率は低迷し、党内の中堅・若手からは派閥主体の古い自民党と決別し刷新感を出せる候補への期待が高まる。40代の若手としては、19日に出馬表明した小林氏と小泉氏だ。
候補者が乱立することが予想される今回の総裁選では1回目の予備選では票が分散し、誰も過半数を獲れそうもない。仮に小泉氏と小林氏の決戦投票になれば、多くの議員たちは次の衆院選、参院選のことを考える。そうなると、小林氏では選挙の顔としてあまりに弱い。そこで知名度抜群の小泉進次郎氏がポスト岸田の有力候補として急浮上してきたのだ。
ちなみに共同通信社が17~19日に実施した電話世論調査によると、次の総裁にふさわしいのは石破氏が25・3%でトップとなり、小泉氏19・6%、高市氏10・1%が続いた。
小泉氏の後見人である菅義偉前首相は、決選投票を見据えて「次期総理総裁は進次郎に白羽の矢を立てた」との観測が専らだ。
「ポエム政治家」?
ただ小泉氏には環境相時代の発言から「ポエム政治家」「政策は何も分からない」との揶揄する声もある。そこで本紙は、小泉氏の実力と実績を検証してみた。
まず、菅政権最大の功績といえる2050年までにCO2など温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN50)」を就任間もない菅首相が20年10月の臨時国会の所信表明演説で表明するよう説得したのは小泉氏だった。また21年11月に閣議決定した現行の第6次エネルギー基本計画案に30年度の温室効果ガス「46%削減」や再生可能エネルギー比率「36~38%」の目標や「原発依存度低減」維持を梶山弘志経産相(当時)の抵抗にも関わらず盛り込んだのも小泉氏の実績だ。さらに炭素税やキャップ&トレードのCO2排出量取引などカーボンプライシング(CP、炭素の価格付け)の導入について、経団連がこれまでの方針を転換し、十倉雅和会長の支持を表明させたのも、小泉氏の功績だ。それが23年5月に成立した「GX推進法」につながった。
19年秋の環境相就任以来、小泉氏が率先して地方自治体を説得してきた「CNシティ」宣言都市は100を超え、それが地域の脱炭素化につながり、「地域脱炭素移行・再エネ促進交付金」の創設へと結実した。
導入当初は国民に不人気だったレジ袋の有料化は国民・消費者の行動変容・ライフスタイル転換につながり、23年7月に「デコ活」が愛称として決定された。また防衛省との連携も開始し、島しょ防衛と再エネ設備の協同も行った。
こうした実績は「ポエム政治家」との揶揄が、的はずれであることを証明している。