東風西風 とうふうせいふう
本紙の先週号の1面トップで水俣病訴訟の熊本地裁判決を取り上げ、それに影響した国側の証拠として、日本神経学会が環境省の求めに応じ2018年5月に作成した「メチル水銀中毒症に係る神経学的知見に関する意見照会に対する回答」に焦点を当てた▼この日本神経学会の「回答」を含む行政の姿勢については、日本科学者会議が22年5月に発表した「決議 水俣病訴訟における相次ぐ不当判決に抗議する」のなかでも強く批判されている▼それによると、行政は水俣病研究の実績がほとんどない日本神経学会理事会に対し「回答」を求め、同理事会が医学的根拠も作成プロセスも明示せずに作成した「回答」が裁判所に持ち込まれたと指摘▼それが、水俣病被害者互助会の未認定患者8人による訴訟で患者側の上告を退けた22年3月8日の最高裁判決や、同互助会の7人が水俣病と認定するよう求めていた訴訟で請求を退けた同月30日の熊本地裁判決の根拠とされたとしている▼そのうえで、このような無法な行政はあってはならず、裁判所がこれらの訴訟で不当極まる国・地方行政を追認したことは、行政権力をチェックし人権を守る司法の役割を放棄するものだと批判している。こうした決議内容は多くの国民に広く知られるべきである。(真)