東風西風 とうふうせいふう

浜名湖はダイダラボッチが転んで手をついた際にできた穴。子どもの頃、地元・浜松に伝わる昔話として聞いた。ダイダラボッチは日本各地に伝承する巨人で山や湖を作ったとされる。このダイダラボッチをモチーフにしたネイチャーポジティブ(自然再興)のイメージキャラクターが昨秋から活動を始めた。「だいだらポジー」と名づけられ、その姿かたちは何とも愛らしい▼生物多様性とそれを育む自然は人類が存続するための共通の基盤だが、いま急激に損失が進んでいる。その損失を止め反転させ、自然を回復軌道に乗せようとするのが自然再興▼日本は2030年までの自然再興の実現と、そのために陸と海の30%以上を保全する「30 by 30」目標を掲げている。この目標を達成するには、国立公園などの自然保護地域だけでなく里地里山や都市の緑地など身近な自然にも目を向け、国をはじめ企業や自治体、市民団体などが連携して取り組みを進める必要がある▼今国会で成立した「生物多様性増進活動促進法」は、企業等による生物多様性保全の取り組みを後押しするもので、環境省が昨年度から始めた「自然共生サイト」の認定に弾みがつくと期待されている。巨人の力も超えるような自然破壊を招いた社会を変え、豊かな自然を取り戻す取り組みを着実に進めたい。(宜)