東風西風 とうふうせいふう

▼福井県勝山市の静かな山間に、幻の渓流魚・アマゴをフルコースで堪能させてくれる宿がある。頭から丸ごといただける香ばしい塩焼き、稚魚の天ぷら、酢味噌で食す洗い、姿寿司、甘露煮…。山菜などの地元食材と合わせた一皿一皿は滋味深く、いつ訪れてもしみじみと美味しい▼それぞれの料理にベストサイズの新鮮なアマゴをふんだんに提供できる理由は、自らがその希少魚を養殖しているから。養殖池の構造や餌の質・量などに工夫を凝らし、丹念に育てるアマゴは、身が引き締まっていて骨は柔らかい。店主曰く「天然に勝る」は過言でない▼それが、8月豪雨で壊滅的な被害を受けた。止まぬ大雨に川の護岸が崩れ、泥水が流れ込み、取水が機能せずでは、清流魚が生きられるはずはない。卵から大切に育てた15万匹が失われた。「豪雪への備えはあれど、夏季の大雨など未曾有」。今回はそんな地域が広く襲われた。「想定外」は、今やもう国内外のどこにもない▼さて、防災週間。改めて防災マップを広げると、大火災、地震、水害など災害別に異なる避難場所などのアイコンが酷似していてビックリ。慌てて見るときっと間違うから、平時に確認しておくことが大切だ。災害大国を踏まえ、もっと分かりやすくすべき、だとも思うが。(孝)