2023年我が社の環境ビジネス戦略 流機エンジニアリング 代表取締役社長 西村  聡 氏

――2022年を振り返って。

当社は9つのビジネスユニットと13分野にわたって事業を展開しており、外部環境が変化しても互いに支え合う構造にしている。そうした点が生かされ、資材高騰など外部環境が変化したものの全体としては大きな影響を受けなかった。業績も前年比とそん色ないレベルに着地できるとみている。

――柱の一つである水処理事業については。

水処理事業では新参者だが、既存のバイオ処理設備では対応できない課題に対処できるのが強みだ。多くの企業にとって排水処理は、法令を遵守するため経費をかけて基準以下にするのが目的。当社では、排水基準以下にする段階からフェーズを上げ、もう少し高度に処理し、きれいな水にして再利用しませんかと提案している。排水をできる限り再利用して製造プロセスに戻す。水道や地下水の使用量を極限まで減らすことでコストを大幅に削減できる。

当社はソリューションを提供するのが仕事で、その仕方は会社ごと、現場ごとに異なる。いまは現場で顧客の課題や要望を聞き試行錯誤しながら最適な製品・システムに仕上げている。これまで積み上げてきた経験やノウハウを生かした横展開が可能となり、大型案件の受注につながった。

――昨年、TBMの横須賀工場に環境関連設備を導入すると聞いたが。

この工場は、回収した使用済みのLIMEX(石灰を主原料とした複合素材)と廃プラスチックを自動選別・再生するプラントで、臭気対策や破砕した廃プラ等の粉体輸送、集じん、洗浄水の処理・再利用に当社の技術が使われている。11月に竣工し、今春にも本格稼働すると聞いている。

――洗浄水はどの程度再利用できるのか。

固形物は汚泥として処理し、処理水はできるだけ濃縮して排水量を最少化している。今のところ95%は再利用できる。これにより水道使用量を大きく削減できるし、地下水を汲み上げ利用している事業者にとっては環境負荷の削減にもつながる。

――沖縄県で有機フッ素化合物(PFAS)による汚染対策に取り組んでいるが。

PFASは、環境中で分解されにくく高い蓄積性があるため「永遠の化学物質」とも呼ばれる。沖縄県の米軍基地周辺では、地下水や公共用水域から高濃度の汚染が検出されている。このPFAS対策に当社の「ECOクリーン LFP」が活用できる。この装置は有機物や有機溶剤などを除去し、高濃度の濁水を水道水レベルまでろ過できる。沖縄では汚染の可能性のある地下水を汲み上げて浄化し、公園のせせらぎに利用するため、この技術が採用された。早々に納品する予定となっている。

PFASについては、日本では暫定指針値が定められており、国際的には規制強化の方向にある。当社が先んじて取り組んだことで、浄化対策の進展につながっていけばよいと考えている。

――昨年は小規模事業場向けの水処理装置の販売も始めたが。

「ECOクリーン」をモディファイし、独自の洗浄メカニズムによりフィルターを自動再生し、連続運転を可能にしたものだ。これまでの小規模水処理設備は使い捨てフィルターが主流で交換コストや手間、環境負荷が課題となっていたが、この装置はこうした課題を解決できる。

企画段階から引き合いが来ており、第1号機はコインランドリーなどを事業展開する会社に納入した。同社は「排水ゼロ」を目指し、全店舗に実装していきたいとしている。今後は、水資源やインフラの少ない離島などのホテルや施設への横展開も可能だとみている。 

――CO2回収技術の開発については。

CO2を吸着・固定化する装置の開発を進めており、現在5件の共同研究に取り組んでいる。材料ごとに得手不得手がありコストや供給の課題もある。それらを踏まえた上で最適な材料の選定、制御の仕方などの開発に向け取り組んでいる。

――技術の適用先は。

一つは、電気炉や燃焼炉などの排ガスからの回収。これは比較的濃度が高く、ばいじんや共存ガスとの問題がある。濃度が低いものでは、例えばトンネルからの回収もターゲットだ。意外なところでは、事務所内のCO2対策。建物の気密性が高まったことで、室内のCO2濃度が上がりCO2酔い(眠気)となり、仕事の効率が下がる。そこで、空調システムを使ってCO2を回収できないかという話もある。

――今年の抱負を。

水処理ソリューション事業で横展開を図っていきたい。大きな案件が複数件同時に動くので、きっちり抜かりないように進めていく。

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西村聡氏