福岡市 下水汚泥から「リン回収」 国内最大規模の施設完成 「余剰汚泥」利用で回収効率2倍に
福岡市、月島JFEアクアソリューションおよび全国農業協同組合連合会福岡県本部(JA全農ふくれん)は2日、西部水処理センター内(福岡市西区)に下水汚泥からのリン回収を従来よりも効率的に行える新技術の実証施設が完成したとして、記念式典を開催した。
同市は下水道資源の有効活用に積極的に取り組んでおり、下水汚泥から発生するバイオガス(メタン)を燃料電池自動車用の水素に転換する取り組みや下水汚泥の燃料化なども積極的に推進。下水汚泥に関しても1996年に日本初となるMAP法のリン回収設備を和白水処理センターに導入して「再生リン」事業を開始した。2021年度の設備更新では、再生リンの回収量を大幅に増強(年間130トン)し、22年にJA全農ふくれんとの連携により再生リンの県内循環システムを構築。エコ肥料「e・green」を生み出し、市内はもとより福岡県内にも流通させて循環型農業に貢献しており、再生リン活用の取り組みには歴史と実績がある。
主催者あいさつで高島宗一郎市長は、関係者に謝辞を述べるとともに同施設建設の目的と展望について述べた。
「輸入に頼っており国際情勢の影響を受けやすいリンの安定確保と価格の安定は大きな課題。そこで下水からの回収リンを資源化してJA全農ふくれんと協働で肥料化し、一般的な価格より2~3割安く提供して福岡市および県内の農家の支援につなげるとともに、市民のみなさんの食卓を支える取り組みを行っている。肥料の売れ行きが好調で、再生リンの需要も高い状況にあることから今回、月島JFEアクアソリューションの技術で従来よりも効率よく回収できる実証施設を建設した。年間300トンの製造を目指しており、実現すると現在(和白水処理センター)の2倍、国内最大規模となる。リン資源の県内循環の取り組みを一層加速するとともに、この技術が全国に展開されることにより、下水由来のリン資源の需要拡大とリン価格の安定に寄与すると考えている」
農作物の生育に不可欠ながら、従来はほぼ全量を輸入に頼ってきたリンを下水汚泥から回収し肥料化することは、循環型社会構築と食糧安全保障の両面から注目を集めており、国土交通省が主導して実証・事業化を推進している。今回の事業も24年に下水道革新的技術実証事業(B‐DASHプロジェクト)に採択され設備の建設が進められてきたもので、従来以上に「高効率」なリン回収プロセスを確立し、下水汚泥からのリン回収導入を促進する狙いがある。
月島JFEアクアの鷹取啓太社長はあいさつで「処理が難しいとされる余剰汚泥に高濃度のリンが含まれていることに着目し、効率的にリンを回収できるシステムを開発した。その結果、施設の規模を従来の約半分程度に小型化でき、リン回収のライフサイクルコストを抑える一方で回収率は国内最大となり、水環境保全はもとより農産物の地産地消にも寄与できる。施設を安定運転し、資源循環の成功事例となる福岡モデルとして内外に発信し、脱炭素社会に貢献していきたい」と意気込んだ。
リン回収の効率化を図る技術として、月島JFEアクアが着目した「余剰汚泥」は微生物による排水処理後に残る汚泥で、粘度が高い。従来法では、余剰汚泥に水分量の多い「初沈汚泥」(流入下水から最初沈殿池で沈殿・分離された生汚泥)を混ぜて扱いやすくした「混合汚泥」からリンを回収する。しかし、同量の汚泥に含まれるリンの割合は95対5と圧倒的に余剰汚泥の方が多い。余剰汚泥から直接リンが回収できれば、従来よりも小規模な設備で従来と同量のリン回収が可能になり、回収コストの抑制が期待できる。
JA全農ふくれん本部の栁健司本部長は「リン資源の安定化につながる下水汚泥からのリン回収は願ってもない取り組み。再生リンを用いたエコ肥料の売れ行きは大変好調で、現在20銘柄までに増えている。ここ西部水処理センターの設備で増産される再生リンを活用して、さらに生産者の肥料ニーズに応えていきたい」と喜びを表した。
また、ミス日本・水の天使の志村美帆さんは「限られた資源を大切に生かすリン回収の取り組みは、これからの社会にとってますます重要なものになる。未来につながる施設を見ることができ光栄に思うとともに、この意義を多くに人に伝えていく」と語った。
式典終了後は来賓や報道関係者に向けて施設見学会が行われ、高粘度の余剰汚泥に対応する晶析槽(MAPリアクタ)など、効率的なリン回収の仕組みが披露された。同施設は、26年度中は実証事業として稼働し、27年度からは本格的な運用で国内最大規模の年間300トンの製造を目指す。