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懸賞金型コンテスト NEDO Challenge募集開始 グリーン分野×宇宙データ 技術シーズ求む 経産省、NEDO

人工衛星「第3の目」で自由な発想を

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は18日、人工衛星データを使った技術シーズの発掘を目指す懸賞金型コンテスト「NEDO Challenge(チャレンジ)」の募集を開始した。今年のターゲットは「グリーン分野(環境及びエネルギー)」で、脱炭素やネイチャーポジティブなどさまざまな領域を含む3テーマを設定する。宇宙からの衛星データは地上の視点と異なる知見をもたらすいわば「第3の目」。廃棄物やインフラの管理など環境対策を含む幅広い分野で企業や研究機関が持っている実データと連携させた革新的な発想を求める。担当者は「積極的に応募してほしいのでまずはアイデアレベルでも構わない」と述べる。申し込みは4月30日まで。

懸賞金型コンテスト NEDO Challenge募集開始 グリーン分野×宇宙データ 技術シーズ求む 経産省、NEDO 人工衛星「第3の目」で自由な発想を_

受け付けるテーマはグリーン・ブルーカーボンのクレジット創出に向けた「カーボンクレジット基盤構築」と、風力・太陽光など再生可能エネルギーの導入・管理を効率化する「エネルギーマネジメント基盤構築」、防災・減災や生物多様性保全の取り組みにつながる「気候変動・環境レジリエンス基盤構築」――の3つ。

テーマごとに森林や農地、水域のMRV(測定・報告・検証)手法の開発や、再エネ適地探索・需要予測、自然資本の回復に資する環境評価手法の開発などを例示する。ただ環境分野は裾野が広く公益性も高いため「研究開発につながるものであれば幅広く応募できる」と話す。「まずは宇宙データを使って業務コストを削減するといった組織内で理由付けしやすい観点の企画で始めてもらって構わない。宇宙データの取り扱いに慣れた宇宙スタートアップなどを紹介することもできる」。

選考は5月の1次審査後、6カ月程度のシステム開発とメンタリング(伴走支援)を経て来年1月下旬の最終ピッチイベント(講演発表)により2次審査し順位を決定する。各テーマ1~3位には懸賞金を授与する。順に1千万円、400万円、200万円を上限に、開発に要した金額を同3月中に支払う。応募資格は個人やグループ、法人のいずれか。今回の募集から国内に所在することを求める。

宇宙データを提供する衛星はリモートセンシング技術により、さまざまな光の波長を面的に広く把握する。質的にも均質な情報を一定の時間間隔で、客観的・広域にデータ収集できる。「人間の視覚を拡張する面的・質的・時間的というのが衛星観測の特長。地上で得られる実データと関連付け、補完したり組み合わせたりすることで新たなビジネスにつながるアイデアが生まれる」。

目に見える光を捉えるいわゆる衛星写真は森林や水面、都市など、地上を覆っているものの状態や性質が分かる。赤外線の計測データを使えば地上の温度や水分量が分かるため熱中症や森林火災の対策に使える。エネルギー分野ではそうした数値を電力の需給予測にも使用しており実用化が進んでいる。

また、ある波長を調べることで植物の活性状況が分かるなど、すでにネイチャーポジティブに向けたサービス開発にも使われている。「実データについてAIやデータ分析を交えて宇宙の観点に引き上げることで特定の状況を推測するモデルを構築できる。例えば限られた森林にだけ生息している貴重な動物の分布地図を作成し、AIによるセンシング情報との学習結果を重ねることで、その動物が分布する森林の特徴を割り出せるかも知れない。そうした場合には未知の森林にそのモデルを適用することで生息状況を推測できることになる。知見として有益なのはもちろん、横展開が簡単にできるMRV手法を開発することで、ビジネス化の期待が膨らむ」と話す。

昨年のNEDO Challengeはサプライチェーンの最適化につながるシーズを募集した。約80件の応募の中から選ばれた6件が現在もプロジェクトを継続。収益化が見込める段階に差し掛かっており着実にニーズを捉えている。今年の募集について担当者は「環境と宇宙データのかかわりは1970年代の米国ランドサット計画にまでさかのぼる。さらに近年の衛星データの観測精度と頻度の向上により、グリーン分野への活用がますます現実味を帯びてきており、さらなる注目が期待される。この機会を生かし革新的なチャレンジを受け付けたい」と意気込む。