カーボンゼロへの挑戦(105) 建築物省エネ法改正し、LCCO2評価制度創設へ 住宅TR制度拡充し省エネ対策強化も
国土交通省は3月下旬を目途に、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」(建築物省エネ法)の改正案を今国会に提出する。改正法案は、「建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)評価促進制度」を創設するとともに、住宅トップランナー(TR)制度の対象事業者のうちより多くの住宅供給事業者に対して、より高い省エネ性能を求める仕組みを導入するなど省エネ対策のさらなる強化を目指す。
建築物LCCO2評価促進制度の核心部分
建築物省エネ法の改正は、今年1月29日の社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)による「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方」に関する第4次答申を踏まえたもの。答申は、LCCO2制度の創設と、一層の省エネ性能向上対策の拡充・強化が2本柱となる。
このうちLCCO2評価促進制度の創設は、24年11月の関係省庁連絡会議での議論から本格スタート。欧州連合(EU)が28年度から1千平方メートル以上の新築建築物にLCCO2の評価・公表を義務付けることなどを踏まえて創設。このため、わが国も同制度の開始時期について28年度からとする方針だ。
答申で示された施策の柱は、①建築主、設計者、施工者、建材・設備製造事業者の責務・取組事項に係る指針の策定 ②建築物LCCO2算定・評価に係るルールおよび算定結果の評価基準の策定③建築物LCCO2の算定・評価の実施を促す措置④建築物LCCO2算定・評価結果の表示ルールの策定および第三者認証・表示制度の創設⑤建材・設備CO2等排出量原単位の整備方針策定と建材・設備における表示ルールの策定⑥算定・評価と建材・設備CO2排出量原単位整備への支援措置の実施および産学官が連携して人材育成、体制整備――などだ。
特にこの新制度の核をなすのが、建築物LCCO2の算定・評価の実施を促す措置。具体的には、CO2等排出量が特に大きいオフィスビルの新築・増改築(総床面積5千平方メートル以上の新築等を想定)に際して、建築主に対し国へのLCCO2算定結果の届出を義務付ける。
一方、CO2等排出量の比較的大きい大規模建築物(同じく5千平方メートル未満~2千平方メートル以上を想定)は、建築士が建築主に対してLCCO2評価結果と削減が必要な場合には削減措置の説明を義務付ける。このほか国の庁舎等においてLCCO2算定の27年からの先行実施を予定。さらにLCCO2算定に取り組む優良事業者の選定・公表制度も創設予定だ。
施行後5年以内に義務化対象拡大
改正法成立後は算定ルールと評価基準の策定、表示ルールの作成・公表をはじめLCCO2評価支援、建材・設備CO2等排出量原単位整備支援、削減プロジェクトの支援、その他体制整備を進める。あわせて建材・設備のGX価値評価の検討も宿題とした。なお、同省はこれを第1段階と設定。制度開始後3年以内を目途に制度見直しの検討に着手する方針を示した。具体的には建築主による国への届出制度の適用対象の拡大(対象用途と規模など)を5年以内に措置するとした。また大規模建築物を対象として、届出制度に加えて削減措置を求める制度の拡充の検討も求めている。さらに第3段階(40年代)では基準強化や削減措置強化等を行う方針も示した。
住宅TR制度を拡充、新技術認定制度創設も
一方で省エネ性能の一層の向上対策では、新築対策として、住宅TR制度の対象事業者のうち住宅市場に占める割合が特に大きい住宅供給事業者に対し、より高い省エネ目標の達成を目指す「中長期計画」の策定を義務付ける制度を創設する。合わせて、「ZEH・ZEB水準の省エネ性能を有する自然換気方式や地熱利用技術など特殊な構造・設備を活用した新技術の大臣認定制度を創設することで省エネ性能の一層の引き上げに取り組んでもらう考えだ。
このほか法改正以外では、25年度補正予算でZEH・ZEBおよび省エネ性能が一段と強化されたGX志向型住宅への支援強化を経済産業省や環境省と連携して進める。そのほか各種支援措置における適用要件の基準引上げも行う。また既築対策では、3省連携による改修支援と性能表示の拡充に取り組むほか、建物への再エネ促進として、ペロブスカイト太陽電池等の普及促進に向けた支援措置を講じる。
住宅・建築物からのCO2等排出量は、わが国全体の4割を占めるという。欧州では削減義務化など規制措置を導入する国が増えているという。わが国も一層踏み込んだ規制措置の早期導入が課題となりそうだ。
環境ジャーナリスト 北沢一樹