十倉経団連会長に山口前環境相が〝異議〟 脱炭素国債の償還財源は「炭素税だ」

自民党は13日、GX(グリーントランスフォーメーション)実行本部(本部長=萩生田光一政務調査会長)の初会合を開いた(写真)。政府のGX実行会議(議長=岸田文雄首相)が年内にまとめる、脱炭素へ官民合わせて150兆円を投じる10年間の工程表への提言を12月上旬までに策定する。議論の焦点は〝脱炭素国債〟20兆円の償還財源だ。十倉雅和経団連会長は排出量取引が〝推し〟だが、山口壮前環境相は炭素税の導入を主張した。(小峰純)

★経団連は「否定」

萩生田本部長は冒頭、「GXをてこに日本経済を再び成長軌道に乗せていく。産業界が投資を加速していくことが何より重要だ」とあいさつ。茂木敏充幹事長も「脱炭素化はもはや成長の制約ではない。投資を加速することで成長を生み出す」と強調した。

政府は7月にGX実行会議を設置し、政府が支出する20兆円を調達する国債「GX経済移行債(仮称)」の制度設計を進めるとともに、脱炭素へ官民で150兆円を投じる10年間の工程表を年内に取りまとめる。政府支出の調達方法は、GX実行本部の大きな議題だ。

同日は、政府の実行会議委員も務める経団連の十倉雅和会長から、政府に対する要望を聞いた。十倉氏は「GX経済移行債」については「使途、受益者、負担者、経済的影響などを勘案しつつ、償還期間のあり方を含めて総合的に検討すべきだ」との経団連の基本的な考え方を説明。その上でカーボンプライシング(CP、炭素の価格付け)については、地球温暖化対策税や炭素税、道路財源となるガソリン税等のエネルギー関係諸税、FIT(再エネ固定価格買取制度)賦課金、クレジット取引、GXリーグ(自主的な排出量取引)など既存制度との関係も踏まえ「成長に資する仕組みを導入すべきだ」と指摘した。

具体的にはGXリーグにおける排出量取引制度を挙げ、「キャップ&トレード型の排出量取引制度は、タイミングを含め、日本の実情に即した適切な制度設計ができれば、有力な選択肢になる」と温対税の増税や炭素税の導入には否定的な見解を述べた。経団連は9月9日に発表した23年度税制改正への提言でも、「炭素税の新規導入や既存の温対税の税率引き上げは、少なくとも現時点では合理的とは言えない」としていた。

★〝チーム山口〟参入

十倉会長の発言に真っ向から意義を唱えたのが、環境相の政務3役経験者で構成する〝チーム山口〟こと「環境戦略研究会」を率いる山口壮前環境相だ。

「CPは、排出量取引だけでなく炭素税を含めて検討すべきだ」と強調したのだ、排出量取引の政府収入では、山口氏がかねて唱える「脱炭素国債」こと「GX経済移行債」の10年間20兆円の償還財源が大幅に不足することを懸念しての発言だ。この日は、戦略研究会の丸川珠代元環境相、務台俊介前副大臣、穂坂泰前政務官らも出席した。炭素税導入を指向する環境省の応援団だ。

このほか、東京電力・柏崎刈羽原発が地元にある細田健一衆院議員(新潟2区)は「電力の安定供給、脱炭素の観点から原発は必要だ」と強調した。国光あやの衆院議員(茨城6区)は「消費者の観点から環境運動を起こすことが必要だ」と提起した。環境省の松澤裕地球環境局長は「来週にも国民運動のさらなる展開策を発表したい」と応じた。