人材を育て活かす環境づくり(81) コミュニケーションは人材育成そのもの 「察する文化」から「きちんと言葉にする文化」へ
廃棄物処理業界に関わっていると、「言わなくても分かるだろう」「見て覚えて」といった空気感、まだまだ根強いなと感じることが多いです。いわゆるハイコンテクストな文化、簡単に言うと「言わなくても分かるだろう」という前提で成り立つコミュニケーションが当たり前になっている現場も少なくありません。
もちろん、現場での経験や勘は大事ですし、先輩の背中を見て学ぶことにも意味はあります。ただ、それだけで通用する時代ではなくなってきているのも事実です。世代も違えば、育ってきた環境も違う。価値観や前提条件がバラバラな中で、「自分の当たり前」をそのまま相手に当てはめてしまうと、どうしてもズレが生まれてしまいます。
廃棄物処理業界では特に、安全や法令順守が事業の根幹です。だからこそ、ちょっとした認識の違いや伝達不足が、大きな事故やトラブルにつながる可能性もあります。それなのに、「たぶん分かっているだろう」「前に伝えたはずだ」という前提で進めてしまう。これ、実はかなりリスクの高い状態やと思うんです。
だからこそ大事なのが、「伝えたつもり」で終わらせないことです。こまめなコミュニケーションというのは、単に回数を増やすことではありません。相手がどう受け取っているかを確認しながら、ちゃんと伝わるまで言葉にすることです。例えば、指示を出したあとに「ここまでで分からないところはない?」と一言添えるだけでも全然違いますし、相手に説明し返してもらうことで認識のズレにも気づけます。
こういう積み重ねが、人を育てます。逆に言うと、ここを省いてしまうと、いつまで経っても「言われたことしかできない人材」から抜け出せません。コミュニケーションは単なる情報伝達ではなくて、人材育成そのものやと私は思っています。それに、コミュニケーションの質が変わると、職場の空気も変わってきます。ちょっとした違和感や「これ、こうした方がいいのではないか」という声が出やすくなる。そうすると、現場が自分ごととして動き出して、組織全体が活性化していきます。そして、この信頼関係を築くことは、安全で安心して働ける職場環境づくりにもつながります。
廃棄物処理業界において、安全で働きやすい職場であることは何より重要であり、その土台となるのが日々のコミュニケーションです。これからの時代は、「察する文化」だけでは限界があります。「きちんと言葉にする文化」に変えていくことが必要です。自分の当たり前は相手の当たり前ではない。その前提に立って、一つひとつ丁寧に伝えていく。その積み重ねが、世代を超えて信頼関係をつくり、強い組織をつくっていくんやと思います。
忙しい現場だからこそ、つい省略してしまいがちなコミュニケーション。でも実は、そこに一番大事な本質があります。日々の何気ない一言が、人を育て、組織を変えていく。その意識を持つことが、これからの廃棄物処理業界には求められているのではないでしょうか。安全で安心して働ける職場環境こそ、これからの業界にとって欠かせない基盤になっていくと思っています。
シューファルシ 代表取締役 武本 佳弥