国内最大級のメタン発酵、堆肥化施設が竣工 大栄環境
大栄環境(大阪府和泉市)が三重県伊賀市で建設を進めていた食品廃棄物等のメタン発酵・堆肥化施設が完成、先月28日に地元・工事関係者らを招いて竣工式を開催した。処理能力はメタン発酵施設が日量320㌧、堆肥化施設が日量92㌧と国内最大規模となっている。先月22日に産業廃棄物処分業の許可を取得、中部、関西エリアの食品関連会社等から排出される食品廃棄物等を中心に、今月以降順次受け入れを開始。今後一般廃棄物許可も取得予定となっている。メタン発酵施設ではバイオガス発電を実施、発電した電気はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用して売電する。さまざまなリサイクルに取り組む同社グループだが、メタン発酵施設は今回が初となる。
新たに完成したメタン発酵施設は処理能力日量320㌧で定格設備能力は1980㌔ワット(最大出力990㌔ワット2基)、年間発電量は約1万5千メガワット時となっている。4千立方メートルの発酵槽2基、3080立方メートルのガスホルダーを要する国内最大規模の施設となっている。産業廃棄物の許可品目は①汚泥②廃油③廃酸④廃アルカリ⑤紙くず⑥動物性残さ⑦家畜ふん尿(①②③は水銀含有ばいじん等を除く)――となっている。前処理施設は、搬入された廃棄物を投入されると人手を介さずに不適物を取り除くことができるように自社設計した。メタン発酵施設の設計・施工は、国内トップクラスの実績を持つ神鋼環境ソリューションが手掛けた。FIT売電は23年4月から20年間。
堆肥化施設は処理能力日量92㌧(24時間)で、堆肥生産量は日量4・6㌧。産廃許可品目は①汚泥②木くず③動物性残さ④家畜ふん尿――となっている。通常の堆積発酵では30日程度かかる発酵処理が、縦型発酵装置を導入したことで7日間程度で可能となり、効率的な処理を実現している。堆肥化については、同社は兵庫県三木市でイオングループと食品リサイクルループの取り組みを展開しており、今回も同様のスキームを構築することを計画している。
竣工式であいさつした同社の井上吉一副社長は、「堆肥化施設についてはすでに三木市でリサイクルループを構築しており実績がある。この地においてもリサイクルループを構築し、食品廃棄物の循環型社会の形成を担っていきたい。メタン発酵施設はグループで初めて設置した施設だが、すでに行っている他社と比べても非常に大型の施設となっている。この地で成功した後は、他の事業所等でも取り入れて行けるのではと思っている。これからの脱炭素を考える上で、非常に重要な施設になってくるのではないかと感じている」などと語った。
同社グループでは資源循環システム高度化の一環として、今回のメタン発酵、堆肥化施設の稼働により食品ロスの有効利用につながると考えている。メタン発酵施設で肥料化や飼料化に向かない食品廃棄物からもバイオガスを回収することが可能で、食品関連事業者にとって資源化率向上につながる。また、堆肥化事業では農地土壌の炭素貯留量の増加とGHGの1つである一酸化二窒素の排出削減につながる環境保全型農業にも貢献する。廃棄物を焼却処理せずに資源やエネルギーに変えていくことで、2050年カーボンニュートラルの実現に寄与していく考えだ。
同社は今後も脱炭素社会に向け、他地域でもメタン発酵施設を展開して行きたい考え。それに向けた課題について井上副社長は、「まずは地域の理解を得ることが大前提となる。その上でエリア統制をしっかり行いながら計画的に、コストパフォーマンスも考えながら建設を進めて行くことが必要だ」と話している。


