東風西風(2025年8月6日)
埼玉県行田市で2日、下水道管路の点検作業中に作業員4人がマンホールに転落し亡くなった。勤務先の会社によると、4人は転落防止器具を装着しておらず、地上から酸素を送るマスクも用意されていなかった。転落した直後、有毒な硫化水素の濃度を測定する検知器は国の基準値の15倍以上を表示していたという▼1月の埼玉県八潮市の道路陥没、3月に秋田県男鹿市で補修工事中に起きた作業員の死亡と、下水道管路を巡る大きな事故が重なった。これらの事故を受け関係者は、安全性確保の最優先を肝に銘じたはず。それにも関らず痛ましい事故が繰り返された▼下水道管路のような閉鎖空間での作業は、硫化水素中毒や酸素欠乏などの危険と隣合わせだ。油断や慢心、安全器具の不備、安全管理対策の形骸化、不十分な監視体制が重なると重大な事故につながる可能性がある▼関連法令などに基づく安全対策の徹底はもちろんのこと、発注者である自治体と下請けも含めた受注企業が一体となった安全管理や危険予知の意識の共有が一層求められる。その上でリスクアセスメントや監視体制の強化、具体的な対策の義務化、作業員への安全教育・訓練の強化、さらには省人化・無人化に向けた最新技術の導入に取り組む必要がある。(宜)