東風西風(2025年12月10日)

長野県の野沢温泉村で雪かき中の人が熊に襲われたというニュース映像を見て驚愕。変化に富むコースと温泉、名物の漬物、民宿や居酒屋の人情等々に魅せられ幾度となく通ったスキー場ゆえ、町並みには憶えがある。現場は人通りも多い町の中心部だ。怖すぎる▼熊ほどの人的被害がないためニュースになっていないが、より広く全国的に深刻なのは鹿被害だ。天敵が少なく繁殖力が高いことから個体数が急増し、森林被害の約7割は鹿(林野庁)。野菜や水稲などの農作物への食害も酷い。有害鳥獣として捕獲者支援等も講じられてはいるが、ハンター人口の減少、捕獲後の処理等の問題は熊同様だ▼地域課題を学ぶ授業の一環で獣害の実地調査をした龍谷大学の学生3人は、巨大なプール状の穴に銃殺された鹿が折り重なって廃棄されているのを見て、そのおぞましさに衝撃を受けた。被害住民の心情と捕獲された動物の惨状を熟慮し、出した解決法は「命を無駄にせず、ジビエとしてありがたく頂く」こと▼野生鳥獣肉は即死させてすぐに血を抜かないと臭みが出る。銃殺では難しいため、そろって「わな」の猟銃免許を取得。解体や精肉加工の技術を学び、捕獲から販売までを一括して事業化し、持続可能なジビエの供給を実現した。熊でもどうか。(孝)