東風西風とうふうせいふう

「僕は野球が好きで大好きで、練習できる週末が楽しみだった。今はそれを毎日やっている。好きだからやる、という根本は変わっていない」。野球少年に一つ大切なことを教えるとしたら「純粋に野球を楽しむこと」。大谷翔平選手のプレーをテレビで見るたび、その言葉を思い出しうなずいている▼大リーグの規則を変えた「大谷ルール」が米国のオンライン辞書に新語登録されるほどに大活躍のヒーローが、また史上初の偉業を成し遂げた。投打とも今季「規定数」に到達。試合総数の3・1以上の打席と、チーム試合数と同じだけの投球回は、レギュラーとしてほぼフル打席に立ち、先発ローテーションの柱を担わないと得られない数だ▼厳しい世界で常に使ってもらうためには、コンスタントに好結果を出し続ける実力と、1シーズン地球1~2周と言われる移動距離にも体調を崩さぬタフさが不可欠だ。爽やか笑顔で成し遂げる姿は素晴らしすぎる▼そんな大選手は、マナーの良さでも知られる。打席に向かうときでさえごみがあると拾ってポケットに。その前にごみに目が行く心の余裕に驚きだ。曰く「ごみ拾いは人が捨てた幸運を拾うこと」。秋晴れの下、各地でごみ拾いイベントが開かれている。大谷選手の快挙を称えつつ、幸運を拾おう。(孝)