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東風西風(2025年10月22日)

万博が終了した。非難殺到のち人気沸騰、激動の184日間。環境やエネルギー関連の多彩なイベントを取材しに幾度も訪れ、プライベートでも前売り券と通期パスを駆使して通った。デジタル予約に翻弄され会場でもスマホ画面と格闘。猛暑日に長蛇の列に並ぶなど、苦難もあったが楽しさや感動の方が大きく勝った▼命の循環と和の魅力を美しく見せてくれた日本館。巨大ハンモックにみんなで寝そべり、美しい街並みや自然を眺めたルクセンブルク館。「持続可能な経済活動の鍵は、循環経済」と、明確な姿勢や取り組みを丁寧に訴えたドイツ館。心に響いたパビリオンは数多い▼一番はやはりイタリアだろうか。「芸術は命を再生する」をテーマに、2世紀の巨大アトラス像、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチなど国宝級アートを、もったいぶらず大胆に展示。自由に見てね、の感覚がスマートで、さすが▼だが最も胸を打ったのは作品ではなく、悩みや希望を訴えるティーンエイジャーの映像だ。頭まで固定された車いすに乗る彼は「メタバースは素晴らしい」と認め、続ける。「だけど僕は学校に行きたい。友達と遊びたいし、一緒に学びたい」。リモートや仮想が普及する今だからこそわかる「現場」の価値。万博成功の理由はそこにあると思う 。(孝)