財政審建議 上下水道事業の広域化・一体化を ウォーターPPPの導入等も
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は2日、2026年度予算の編成などに関する建議を片山さつき財務相に提出した。それによると、主な環境関係では、人口減少社会における適切・効率的な社会資本整備を図るため、上下水道事業の広域化・一体化や「ウォーターPPP」の導入を促している。また、事故発生時に社会的影響が大きい上下水道管路について、更新やリダンダンシー(施設の多重化等)の確保が重要としている。さらに、今後の人口減少に伴い、既成の上下水道システムをそのまま更新していくことは困難になるため、人口規模に応じた浄化槽など分散型システムの早期導入に向け、支援の重点を移していくことが求められるとしている。
建議によると、上下水道システムについては、その多くが基礎自治体単位で設計されており、官業や規模の小ささに起因する課題も見られると指摘。特に、小規模自治体では、人材や財源の不足、施設の老朽化といった問題が顕在化するなか、ウォーターPPPなどの官民連携により、資源を有効活用し、経営を効率化することが重要と指摘。その際、単一市町村ごとの委託による小規模案件の乱立は非効率で、事業の広域化を妨げてしまう可能性にも留意しなければならないとしている。
また、現在、複数の自治体でウォーターPPPの導入検討が進んでいるが、「アクションプラン」の改訂も併せ、経営の広域化などの効率化を前提とした制度設計を促していくべきだとしている。
さらに、上下水道事業の広域連携の形態として、経営主体と料金体系を一つに統合する「事業統合」が主流となっているが、自治体間の料金格差から住民合意を得ることが課題であると指摘。広域化をより促進していくためには、統合前の複数の料金体系を維持しつつ、経営主体を統合して規模のメリットを先行的に享受する「経営の一体化」の検討が望ましいとしている。
老朽化対策については、単なる補助率の引き上げや要件緩和ではなく、国庫補助に係るこれまでの経緯等も踏まえ、国と地方の役割分担の観点から制度のあり方を整理すべきだと指摘。また、新たに連絡管等を設置する際は、市町村単位にとどまらず、広域的な観点からより効率的な整備がなされるよう、補助要件等を見直していく必要があるとしている。
分散型システムについては、人口密度の低い区域の場合、給水や汚水処理に係る単価が割高となるため、費用が料金収入等を大幅に超過することから、 これまで既設管路の維持更新を前提に支援してきたと指摘。今後は集約型システムの単純更新のみにとらわれず、各地域の状況に応じて分散型システムへの切り替えなどを早急に進められるよう、限られた予算のなかで支援の重点を移していくことが求められるとしている。