東風西風(2025年7月9日)
今や世界的な問題となっているプラスチック。マイクロプラスチックの海洋汚染などで生態系への影響が懸念されているが、もともとは動物を守ることにもつながるものとして開発されたのがプラスチックだった▼1860年代、ビリヤードの玉の原料には象牙が使われていたが、象牙の需要増により価格が高騰したのと、象牙の供給源であるゾウが減少したため、象牙に代わるビリヤード玉の原料として最初のプラスチックであるセルロイドが開発された。ゾウを救うために作られたというわけではないが、ゾウの保全につながる発明だった▼それからわずか200年足らずでプラスチックは急速に普及し、人々の生活に浸透していった。結果、スリランカでは野生動物、特にゾウがプラスチックを誤飲して死亡する事例が相次いだことから、2023年に使い捨てプラスチックの製造・販売が禁止された。最初はゾウを守ることにつながると思われていたプラスチックが、時を経てゾウの死亡事故を引き起こすという皮肉な結果となってしまった▼日本ではレジ袋の有料化が義務付けられてから、この7月で丸5年が経過した。この効果を今一度検証しつつ、プラスチックにどう向き合っていくべきか、改めて考える時期に来ている。(心)