2023年の下水道界展望―関連団体トップに聞く 日本下水道管路管理業協会 会長 長谷川 健司

今年は水道法等の改正により厚生労働省から水質管理は環境省へ、運営管理は国土交通省の管理下へと再編されます。背景には、コロナ禍での厚労省の業務過多の緩和として水道管理を他省管轄へ移管する方針で、今年の通常国会で採決される流れです。

再編により、我々下水道関係者が水道事業者と連携し上下水道事業を進めていく上で利用者に対し適時最適なサービスを心掛けるとともに、両事業者の意見交換等が活発化することに期待したいと思います。

施設の管理や設計を担うコンサルタント企業や団体は、上下水道に関わる会社が多く、あまり問題はないのですが、管路管理においては、水道は自治体等が管理をし、下水道は我々下水道管路管理企業が現場実務を担う分業制で、上下水道管路管理業務が連携して行われた実態はありません。今後上下水道の包括的民間委託もしくは民営化が進むと、上下水道の管路管理における連携はサービスの価値を高めるための重要な鍵と考えます。例えば、災害時の管路施設において下水道が閉塞している状況では、水道の給水はどのタイミングで開栓して良いのか状況を確認した後でなければ2次災害を起こす可能性もあるからです。

近年、当協会は専門業者だけではなくコンサルタント企業や大手ゼネコンが名を連ねる傾向があります。包括的民間委託が全国で検討される中、参加企業によっては、自らの役割を明確化し総括的な管理や各企業体のマネジメントを行う意識よりも、仲介料などマネー先行型の意識が強いケースもあるようです。専業者を現場業務だけの相手と考えているケースもあります。現場業務を担う当協会の会員も現場さえ出来れば良いと考え、現場での創意工夫や技術力を重んじ自分達の価値を高める努力が進んでいないといった状況は残念でなりません。包括的民間委託は、参加する企業に明確な役割が存在しないと成立しないばかりか割を食う企業が発生するのが現状のようです。

包括的民間委託に向け、明確な役割と実施が必要な時代が到来します。その後押しとして当協会では、独自の「下水道管路管理技士制度」を実施し昨年11月には延べ1万人以上の有資格者を認定し管路管理業務に必須の資格として全国200以上の自治体に活用いただいています。資格制度には、専門技士(清掃、調査、修繕・改築)、主任技士、総合技士の3種類があり、すでに専門技士(調査)、主任技士の資格は国交省の認定資格制度に登録済みで、今年は総合技士の認定を申請しています。これは下水道の管路管理における現場作業の技術力、提案力の向上や履行能力を高めるために実施している資格制度です。下水道管路管理に従事する者は有資格者であり、委託する自治体側もサービスの向上には、入札参加資格や総合評価の加点に資する資格制度があることへ理解を深めていただければと思います。また自治体側が災害支援の際にも安心して支援要請を依頼し、有資格者が支援に駆けつけることは、安全安心を担保することにつながると思料します。

当協会は自治体への災害支援や資格制度の認定等を行い、上下水道業界においてその業務における立ち位置を明確化し、会員の企業力の向上を目指していきます。また会員同士の連携や枠組み等も関係機関に提言し、上下水道利用者へのサービス向上を目指したいと思います。

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日本下水道管路管理業協会会長 長谷川健司