2023年我が社の環境ビジネス戦略 建設環境研究所 取締役環境部門長 荒木  隆 氏

――初めに、御社の事業概要等の紹介を。

当社は、インフラ整備をより自然や生活環境に調和した形で進めていくことを目的として、1983年に設立し、昨年40周年を迎えた。企業理念として、「環境と建設をともに理解する私たちだからこそできる『人と自然を未来につなげます』」と、「社業をとおして社員みんなが『明るく、楽しく、自己実現できる企業』を目指します」の2つを掲げている。

主な事業分野として、環境、防災・減災へのアプローチ、河川、砂防、都市緑化、安全快適な道路整備や防災まちづくり、環境影響評価などで、関連の新技術開発などにも積極的に取り組んでいる。

その結果、国土交通省や自治体、民間企業等において売り上げと利益を増大することができ、2021年度は、売上高が過去最高の76億9400万円(前事業年度比10・8%増)、営業利益が3億8200万円(同27・5%増)、経常利益が過去最高の4億4400万円(同31・0%増)、当期純利益が2億3400万円(同6・0%増)の増収増益となった。また、国土交通省等からの業務表彰を20年度より7件多い計49件いただいた。業務成績評定点の平均点も0・5点高い過去最高の79・2点をいただくなど、高い評価をいただいている。

現在の事業比率は、公共事業が8割強、再生可能エネルギーなど民間事業が1割強で、公共事業への依存が高く、河川、ダム、道路、地域計画、公園等の調査、計画、設計業務などに携わっている。社員は465人、そのうち技術士が延べ230人の専門家集団である。環境以外にも、土木、情報、地域計画、建築、ランドスケープなど幅広い分野の人材を擁している。

グループ内には「海」を担当する三洋テクノマリンがあり、当社が「陸」を担当している。それぞれ自前の分析センターを持ち、環境DNAやマイクロプラスチックをはじめ、幅広いニーズに迅速に対応できる体制を整えている。

働き方改革の取り組みでは、新型コロナウイルス感染症への対応として、社員のライフスタイルに合わせたテレワークや、サテライトオフィスなどの新しい方式を取り入れている。また、「プラチナくるみんマーク」の取得に代表される子育て支援制度の整備・充実も図っている。

――今年度から3カ年の新中期経営計画がスタートしたが、その概要は。

新中計は、「サステナブル社会に貢献する人づくり・組織づくり」をビジョンとし、9つの柱からなる。内訳は、まず基盤づくりに重点を置いた成長目標として、売上高81億円、利益率5%の確保を挙げている。また、創業以来のサステナブルな取り組みのブランド化や優れた人材の育成を挙げている。さらに、公共インフラの関連事業では環境と土木が融合した業務のフラッグシップ業務への位置付け、民間の環境関連事業では新たなESG関連事業や情報関連事業の開拓を挙げている。そのほか、先進技術と融合技術の強化、DX等による生産性の向上、多様な働き方の支援、大規模災害など脅威への備えのレベルアップを挙げている。

――今年度の事業展開の主なトピックなどは。

新中計の初年度として、各項目に注力しているが、主なトピックでは、「サステナビリティ推進室」を新設し、当社のブランド力の強化を図っているほか、社長直下に「教育支援室」を新設し、将来を担う人材の育成を図っている。

また、ESG関連事業では、「生物多様性の情報開示支援サービス」を開始した。自然関連財務情報開示タスクフォースに沿った企業の対応状況の診断サービスや、基礎データの収集・整理、生物多様性戦略の策定支援などのサービスを展開している。また、国際自然保護連合の「企業の生物多様性パフォーマンスの計画策定及びモニタリングのためのガイドライン」を翻訳し、ダウンロードサービスを行っている。

さらに、ゲームエンジンによる将来景観の可視化や機械学習による自動画像分類、野外調査のDXで当社が独自開発したタブレット端末使用の「電子野帳」、河川環境CIM(建設情報モデル化)、環境DNA解析など先進技術を駆使したサービスを展開している。

――最後に、今後の抱負を。

新中計の目標達成に向け、引き続き着実に事業を展開していきたい。また、特に新中計のビジョンである「サステナブル社会に貢献する人づくり・組織づくり」に注力し、いわゆる「Z世代」と呼ばれる若い人達に今後ともアピールできるよう取り組んでいきたいと考えている。

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荒木隆氏