泊原発の再稼働「容認」を表明 鈴木知事 「電気値下げ」が後押し

北海道の鈴木直道知事は11月28日の定例道議会で、北海道電力の泊原発3号機(泊村)の再稼働を巡り、「原発の活用は当面取り得る現実的な選択と考えている」と述べ、容認する考えを表明した。現在開会中の道議会での議論を踏まえて最終判断する。北海道電力が目指す2027年度早期の再稼働へ大きく前進した。同社は10月、再稼働後に電気料金を平均的な家庭用で11%値下げする方針を発表しており、知事の容認表明を後押しした格好だ。

鈴木知事は今後、泊原発を視察して安全対策を確認したうえで、安全協定上の4町村の首長の意見や定例道議会での議論を踏まえ「最終的に判断してまいりたい」と語った。28日、泊村、神恵内村、共和町に続き、岩内町の木村清彦町長が同意の意向を表明。安全協定上の4町村全てで首長が同意した。知事は「地元の判断を重く受け止めている」と述べた。鈴木知事が原発の必要性について言及するのは初めて。

鈴木知事は泊3号機再稼働に対する考えの根拠として、新規制基準への適合、地域防災計画の取りまとめ、電気料金値下げ、電力の安定供給、道内経済成長、温室効果ガス削減を挙げた。

知事は、泊原発3号機は東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた「国の新規制基準に適合している」と指摘。道内の電気料金は全国的に高水準だとして「再稼働により電気料金の引き下げが見込まれる」としたほか、脱炭素効果の高い電源である原発の活用で「今後の道内経済の成長や温室効果ガスの削減につながる」と語った。

電力広域的運営推進協議会はこのほど、国内の電力需要は今後10年で6%増え、供給力が不足する懸念があるとの調査結果をまとめた。生成AI(人工知能)向けのデータセンター(DC)や半導体工場などデジタル産業向けの電力需要の大きな伸びが見込まれるからだ。

特に北海道の伸び率は今後10年で13%増と国内10電力エリア別で最大となる。26年にはソフトバンクが苫小牧市でDCを稼働するほか、政府が国策として全面支援するラピダスが27年度にも最先端半導体の量産を開始する予定だからだ。電力の安定供給に泊原発3号機は欠かせない電源となっている。

赤澤亮正経済産業相は28日の閣議後記者会見で鈴木知事の再稼働容認表明を歓迎した。「DCなどが必要とする半導体をラピダスでつくることを含め、産業クラスターの形成に泊原発の再稼働は一定の意味がある」との認識を示した。さらに「北海道に限らず『ワット・ビット連携』として原発を再稼働して近くにDCの立地が実現するのは好ましい」と述べた。

一方、北海道電力は10月末、再稼働後に想定する電気料金の値下げ率とその幅の試算を発表した。試算では、値下げ率は平均的なモデルで家庭向けが11%、実額では月1035円の値下げ幅となった。原発再稼働に伴う電力各社の値下げ率としては最大となる。

北海道電力の電気料金は全国で最も高く、道民の生活や経済への負担となっている。ちなみに電力大手10社が10月27日公表した12月使用分の家庭向け電気代は、北海道電力は標準家庭で9376円だった。最も安い九州電力と比べて2千円ほど高かった。電源構成に占める原発の比率が3割前後と高い九州電力や関西電力では安く、再稼働のない東京電力や北海道電力は割高となっている。

鈴木知事が再稼働容認姿勢を示す条件としてこだわったのは、電力の安定供給や脱炭素に加え家計や企業のメリットとなる電気料金の値下げだった。特に値下げ率と値下げ幅だった。再稼働が生活負担軽減につながることを示すのが、道民の理解を得る上で重要と判断したとみられる。

東電・福島第1原発事故の後、これまでに14基が再稼働を果たしたが、うち13基は関電や九電など西日本に集中する。東日本は東北電力女川原発2号機の1基しか動いていない。東電の柏崎刈羽原発について新潟県の花角英世知事は10月21日、再稼働を容認すると表明した。泊原発も続けば、東日本での原発活用が大きく進むことになる。