インタビュー◎JFEエンジニアリング取締役専務執行役員環境本部長 鮎川将氏に聞く 廃棄物焼却発電とリサイクルの両輪でCEを実現 25年度都市ごみ焼却プラント7件受注、さらなる飛躍目指す

JFEエンジニアリングの環境事業は、売上高は全体の4割、受注高は全体の5割を占める主力事業となっている。半世紀以上にわたって廃棄物処理と向き合い、数々の実績を積み重ねてきた結果、都市ごみ焼却プラントの事業は着実に拡大し、2025年度は過去最大となる7件の受注を獲得した。かつてのごみの安定処理から、近年はごみをエネルギー源として捉え、より高効率な焼却発電を目指す。同時にリサイクル事業の拡大も進め、サーキュラーエコノミー(CE)とカーボンニュートラル(CN)の実現に貢献して行く方針だ。鮎川将環境本部長に、環境事業の現状と今後の展望について聞いた。

――グループにおける環境事業の位置付けや強みは。

当社の事業としてはエネルギー、社会インフラ、そして環境の3つの柱があるが、その中でも2025年度で見ると売上高は全体の4割・受注高は全体の5割を環境事業が占めており、主力事業となっている。環境事業での強みは、まずは何といっても半世紀を超える廃棄物処理の経験と実績に尽きる。長年にわたって蓄積された技術と知見は、単なる知識ではなく、実際のプロジェクトを通じて磨かれた、生きた経験だ。その中で技術を積み上げ、顧客からの信頼を勝ち取ってきた。

もう一つの強みは、他の本部との親和性の高さと、それに基づく総合力だ。例えば、都市ごみ焼却プラントで発電した電力を地元に供給するエネルギーの地産地消も手掛けているし、蒸気タービンにより電気を生み出しているが、これは鶴見製作所で作っている。自社で製造することで、顧客の状況に合わせた高効率で高発電能力のタービンを納めることができる。これは同業他社にはない強みと言える。また、土木建築を専門とする部署があるため、設計段階から一貫した対応が可能だ。こうした全社的なノウハウ等を総合的に活用することで、コストダウン、品質向上、省エネなど多方面で総合力を発揮できる組織となっている。

――環境事業の注力分野は。

大きく4つの分野に力を入れている。一つ目はEPC、O&Mを中心とする国内の廃棄物発電事業(WtE:Waste to Energy)だ。この分野では地方自治体を主な顧客とし、都市ごみ焼却プラントの新設から長期にわたる運営まで一貫して手掛けている。二つ目は海外事業である。WtEと上下水事業(アクア事業)を展開しており、欧州、インド、アジア太平洋地域が主なターゲットだ。

三つ目はグループ会社のJ&T環境が担うリサイクル事業だ。産業廃棄物の焼却発電、プラスチック、ペットボトル等のリサイクル、食品残渣のバイオガス発電と肥料化など複数のリサイクル事業を展開している。四つ目は新規事業で、廃棄物をケミカルリサイクルするWtC(Waste to Chemical)の技術開発に取り組んでいる。これは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金に採択され、現在千葉市で実証を行っているプロジェクトだ。

――WtEの展望は。

中長期ビジョンの中核に、国内事業における廃棄物発電のさらなる収益力強化を据えている。現在、各地方自治体の焼却施設の更新需要が続いている。2035年頃までは高い水準でマーケットが推移し、年間5千トン程度の発注が続くと見込まれている。25年度は過去最高となる7件の都市ごみ焼却発電プラントを受注することができたが、今後も着実に受注を獲得していきたい。同時に、既存施設の延命化や基幹改良工事などにも継続して柔軟に対応していく。

――海外事業の現状と今後は。

正直海外事業はまだ厳しい状況にある。しかし国内事業に目を向けると、人口減少に伴いごみの発生量も減少していくことが明らかだ。だからこそ海外事業を次の大きな柱として位置付け、積極的に取り組んでいる。WtE事業ではドイツの子会社を中心に現在立て直し中で、抱えていたプロジェクトも先行きが見え始めた状況である。今後は欧州を中心に本格的に展開していく方針だ。欧州でのWtE事業は、われわれの海外戦略の最優先課題として位置付けている。ほかに有望視しているのがインド市場だ。先日発表したが、インドで日量750トン規模を処理する2つの廃棄物焼却発電プラントを受注することができた。これを皮切りに、インド市場もさらに拡大していきたいと考えている。

またWtEに加えて、近年日本企業ではあまり注力しなくなったところが多いが、アクア事業にも積極的に取り組んでいきたいと考えている。下水処理に加えて、水再生プラントや水供給事業の分野にも注力していく。アジア諸国でこれらのニーズは今後高まっていくと見ている。

――リサイクル事業については。

J&T環境でグループ自ら産業廃棄物の焼却発電やリサイクル事業に取り組んでいるというのは、他のプラントメーカーにない特徴と言える。これが環境事業全体の大きな強みにもなっているが、リサイクル事業についても収益基盤をさらに強化していきたいと考えており、それには自治体や民間企業からの信頼をさらに高めていく必要がある。

焼却とリサイクルは相反する関係ともみられているが、私は焼却すべきものは適正に焼却して、リサイクルすべきものはしっかりリサイクルするという、両立こそが極めて重要だと考えている。焼却とリサイクルの両輪で、しっかりと環境事業を進めていく。そしてこれらを連携させて、資源循環型社会、CEを実現していくことが、当社の社会的使命だと考えている。

――都市ごみ焼却プラントを取り巻く環境の変化についてどう考えるか。

かつてはごみ処理を安定的かつ安全に行うことが最優先であった。公害を出さないこと、故障を起こさないこと、予備を持つことなど、サービスの継続性に重点を置いていた。地方自治体の責務として、ごみ処理をいかに安定的に行うかといったことにフォーカスしていた。

今は大きく変わってきて、それらのことはもちろん大前提としながらも、 ごみはエネルギーだという認識が社会全体に広がり、われわれも高効率な発電に力を入れている。ボイラーとタービンを組み合わせて、高効率発電のプラントを作ることが当たり前に求められるようになった。ごみのエネルギーをいかに効率よく発電し、地域に還元するか。地産地消による電力供給という形へと大きく変わってきている。

もう一つ大きな変化は、施設そのものに対する位置付けである。かつてはなくてはならない施設ではあるものの、住民からは嫌われるといった施設であったが、今は「市民が集まるような施設にしてほしい」という要望が増えている。プラントとして求められる機能を満足することは当たり前で、地域イベントの開催や出前授業など、さまざまなコンテンツを通じて地域に貢献する施設へと変わってきた。子供も大人も学べて楽しめるような施設が求められるケースが多くなってきているので、そうした面でも創意工夫していく必要性を感じている。

――改めて受注が好調な要因は。

私は、顧客のニーズをいち早く掴み、顧客が本当に望んでいる施設がどのようなものかを理解してきめ細かく対応することが、受注拡大につながっているのではないだろうか、と考えている。

もう一つは、繰り返しになるが長年の経験、実績だ。長期にわたって安定的にプラントを運用するのは基本であり重要なことで、それを実証してきた実績は大きい。技術面でも、発電効率を高め発電量を常に向上させている。日進月歩で技術開発を進め、少しずつ効率を上げていく。こうした技術的な積み重ねも受注増につながっている。

――廃棄物処理施設のAI活用、自動運転の取り組みも進んでいるが。

競合他社に先駆けてAI技術を取り入れた自動運転を進めており、90日間以上の完全自動運転を達成するなどすでに実用化のレベルに達している。これも競争優位性の一つの要因と言えるだろう。ごみ焼却プラントは定期メンテナンスで運転を停止したり、ごみの量によって稼働が左右されたりといったことがあり365日連続自動運転ということは難しいが、これにも挑戦しさらに技術を高めていきたい。

また、近年廃棄物処理施設でリチウムイオン電池混入に起因する火災事故が多発しているが、ごみピット内の煙をAIで早期に発見し火災拡大を防止する「Smoke AI」も実用化しており、自治体等の困りごとに幅広く対応している。

――WtCの進捗は。

WtCはNEDOグリーンイノベーション基金に事業採択され、全社をあげて取り組んでいる開発プロジェクトだ。廃棄物からの生成ガスをエタノールなどに変える技術で、現在は小型の実証施設で試験を行っており、順調に進んでいる。次のステップである日量150トン規模の実証炉を目指して、必要な試験を実施しているところだ。また、開発にあたってはエネルギー本部の技術も活用しながら進めている。社会実装を目指し、4月1日から専門組織も立ち上げた。グリーンイノベーション基金では2030年までの商用化を目標とすることとされているので、それに向けて注力していく。

――2035年長期ビジョンに向けた展望は。

環境本部としての2035年に向けたビジョンは、やはり先にも述べた通り焼却発電とリサイクルの両輪で事業拡大を目指して行く。さらにその先の2050年には、海外も視野に入れた静脈メジャーを目指していく。2035年の時点ではまだその途上であるが、2050年に向けてこの両輪をいかに高めていくかだ。そうすることで静脈メジャーの姿が見えてくるのではないかと思っている。

全社では2035年度に利益1千億円を目標に掲げており、売上規模は1兆円を目指している。環境本部が現状通り4割を担えば、その目標達成に十分貢献できる。課題としては、海外事業とリサイクル事業の安定的拡大、そして新規事業の社会実装が挙げられる。

――人材確保・育成については。

人材不足は業界全体の課題である。定期採用、キャリア採用を行っており、現在は一定数の人材が入ってきている。しかし、将来を見据えると働き手が減っていくのは明白だし、獲得した人材をいかに育成し定着させていくかも重要だ。若手・中堅社員には国内WtE、海外WtE・アクア、リサイクル事業と多岐にわたる環境事業でさまざまな経験を積んでもらい、グローバルな人材を育成していきたいと考えている。キャリア採用者については、即戦力として能力を発揮できるよう、制度的な対応も進めている。長年の技術経験等を持つ人材が、力を発揮しやすい環境を整備することが重要だ。今後は外国人材も積極的に採用していくことが必要になってくるだろう。

一方でAIによる設計など、人手が不要な部分は社内でも自動化を進め、人とAI等とでうまく役割分担を進めて行きたいと考えている。

――社会貢献活動の取り組みは。

環境本部では社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。自治体と接することが多いため、地方の悩みを聞く機会も多い。例えば、こども食堂の支援や出前授業に力を入れている。小学生向けのイベントなども開催しており、こうした活動を通じて社会貢献を図りながら、同時に自分たちも学んでいる。これからのビジネスにどう生かしていくかを日々考えながら、社会との関係を深めている。

――CEが求められる中で、今後の展開や目指すべき姿は。

環境本部の事業である廃棄物焼却発電、リサイクル等の一つひとつのプロセスに丁寧にしっかりと取り組んでいくことが、CEの実現につながると考えている。ブレずにこの方針を貫き、EPC、O&M等のそれぞれにおいて、顧客のニーズに応えながら社会課題解決に貢献していきたい。2035年、そして2050年に向けて、環境本部が全社をリードする存在として、廃棄物発電、リサイクルでCE、CNの実現に貢献していくのが、私たちの使命だと確信している。

(聞き手・黒岩修)

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JFEエンジニアリング 取締役専務執行役員環境本部長 鮎川 将 氏=クリックで拡大=

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長年の経験を生かし、都市ごみ焼却プラントで多くの実績を積み上げている(写真は岡山県西部衛生施設組合の施設)=クリックで拡大=

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