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経営に生かすSDGs講座―持続可能な経営のために―(68) SDGsの各論と総論

日本でのSDGsの認知度は2021年に急速に高まった。現在ではSDGsの各論が浸透してきている。これはこれで歓迎すべきことだが、各論に落とし込む際に、例えば再生可能エネルギーは目標7、気候変動は目標13、廃プラスチックは目標12といったようにラベルをつけるだけで、議論が深まらなくなりがちである。

よく耳にするのは、「これはSDGs的である」「これはSDGs的ではない」といった表現だ。SDGsをバッジやマークのレベルで使うとこうなる。

これは大変もったいないことだ。SDGsの妙味はすぐれた体系にある。

各論に落とし込んだ SDGsのテーマをもう一度SDGsの全体像と照らし合わせて何か漏れや矛盾はないか、という総論的なチェックをすることが大切だ。

つまり各論をやり総論に戻る、総論をやりながら各論に戻るといった「スパイラル構造」でSDGsを使うことが重要なのである。

また、企業では自社の事業についてSDGsの 目標だけでなく、その下の169のターゲットレベルまで使いこなすとともに、SDGsの目標の相互関係を意識する必要がある。

急上昇したSDGsの認知度

日本でのSDGsの認知度は急速に上がっている。

電通が毎年行っている「SDGsに関する生活者調査」の第5回(全国10~70代の男女計1400人を対象、22年1月)では、「SDGsの認知率は8割超、Z世代は発信・消費・市民活動への参加に積極的」という結果だ。

SDGsの認知率は86・0%で、昨年第4回に比し30ポイント以上伸長。18年第1回からは約6倍になった。

「内容まで理解している」という回答は、前回から約1・5倍に当たる34・2%へと伸長。10代は初めて過半数を超えた。

SDGsを認知している人の中で、実践意欲が高い層は36・9%。この層へ訴求するには具体的な事実やSDGsとの関連を示す情報を提供し共感を得ることが必要で、「Z世代」はジェンダー平等への関心が高くSNSなどでの発信が多いなどと分析している(電通プレスリリースより)。

学習指導要領とSDGs

教育面では、小学校は20年度、中学校は21年度、そして高校では22年度から、「新学習指導要領」が全面実施された。今回の改訂では「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され、SDGsの担い手を教育の現場から育成することとなった。

学習指導要領は、世界情勢や社会の変化に応じて、およそ10年に一度改訂。今回の改訂を受けて、小学校の家庭科や道徳科、中学校の社会科、理科や技術・家庭科などにSDGsが盛り込まれている。

大学でもSDGsの講座や研究面も充実してきた。

この結果、受験でも出題される。筆者が監修した『大人も知らない!? SDGsなぜなにクイズ図鑑』(監修・宝島社)の一節がとある中学校の受験問題に引用された。

今後はSDGsを自在に使いこなす「SDGsネィティブ」が育つ。

質の高い教育の重要性

企業へのインパクトとしては、教育関連業界はもちろんのこと、企業の人材採用に直接影響する。SDGsを実装していない企業には、優秀な人材が集まらなくなる、という事態はすでに始まっているのだ。

目標4は、正確には「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」である。岸田政権が打ち出した「人への投資」にも直接関連する。

この目標4は、世界の中で日本の評価が高い。特に次のターゲットが重要で、このうち、次に挙げる4・7の「持続可能な開発のための教育」(ESD:Education for Sustainable Development)という概念は、小泉純一郎首相時代に日本が提案しユネスコとともに推進してきた内容だ。

「4・7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする」

そこで、これからは、日本ユネスコ協会が早くから示してきた、SDGs4番を真ん中に据えて、質の高い教育を行い、残りのSDGsすべての目標に貢献するというとらえ方が重要になるであろう。筆者は、4番に17番の「パートナーシップ」を加えるとより効果的だと考える。

来年2023年は4年ごとに行われている「SDGsサミット」の年だ。

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今回は、わかりやすい解説を試みた、筆者監修の単行本『まんがでわかるSDGs経営』 (ウェッジ社、22年10月25日発売)を紹介したい。

「SDGsの概念はよくわかったけど、具体的に何をしていいかわからない」といった、読者のために、SDGs経営を漫画によるストーリー形式で理解を深めていく。

SDGsへの関心の高い中小企業や自治体の担当者はもちろん、これから経営に実践していきたい起業家やSDGsへの意識の高い学生などの方にも最適な実践入門書だ。

千葉商科大学教授 笹谷秀光

千葉商科大学教授 笹谷秀光
千葉商科大学教授 笹谷秀光