総合環境企業ミヤマ Workcation Place花伝舎 自然体験の場を提供し、環境保全の意義を発信する拠点
リサイクル事業や環境装置の開発・販売などを広く手掛ける「総合環境企業」ミヤマの研修施設「Workcation Place花伝舎(ワーケーションプレイス・かでんしゃ)」。長野市戸隠にある施設は、生物多様性や気候変動等の環境課題に対し解決を探る技術開発拠点であると同時に、社員研修や小中学生等に環境教育を行う学びの場、さらにオープンガーデンの開催などを通じた地域住民との交流拠点となっている。
その取り組みは2023年に安全性の基準を満たし質の高い自然体験プログラムを提供する場を認定する「体験の機会の場」と、生物多様性の保全が図られている地域を認定する「自然共生サイト」の2つに認められ浸透しつつある。花伝舎では、さまざまな植物や生き物と地域が共存し心地よい環境を維持している。
研修施設「花伝舎」としての歩み
05年に耕作放棄地を整備しナチュラルガーデンとしてスタートした花伝舎は19年より自社研修施設とし、ワーケーションプレイス(リゾート地での就労の場)や、技術開発の拠点として維持管理が行われている。
翌20年には社員の環境教育の一環として、花苗の植え付けや植栽の体験実習を行うなど、フィールドワークの機会を提供。以降、毎年実施することで五感を使って自然と携わりそこで得た発見や学びを総合環境企業の業務につなげる重要性を伝えてきた。
21年には市内の小中学生を招いた環境教室をスタート。24年5月時点で延べ7校209名に環境問題や科学の楽しさについて発信を行っている。昨年、環境省が推進する体験の機会の場と自然共生サイトに認定されたことで、希少動植物等を身近に観察でき、生物多様性保全の意義などを学べる自然体験活動の場としてより一層重要な拠点となっている。
「戸隠」の環境を生かしたガーデンづくり
花伝舎は標高1千メートルを超す戸隠高原にあり、冬期は4カ月近く雪に覆われる。平地に比べ春夏秋が短い冷涼な気候に適応するため、耐寒性のある宿根草や花木を中心に約500種を植栽し、早春のスイセンから晩秋のモミジに至るまで季節の移ろいを感じられる。
在来種や戸隠周辺の山野草のほか20種程度の希少動植物も観察でき、同地の気候風土によって形作られる固有性を保つように管理を行っている。同社広報室の小林正征室長は、「こうした戸隠ならではの環境を維持できるよう管理するとともに、一般公開を通じて、一人でも多くの子どもたちや地域住民の方々に環境について考えるきっかけを提供していきたい」と話す。
花伝舎の特徴
園内はテーマの異なる4つの庭で構成されている。四季折々の花が咲くメインガーデンの「陽だまりの庭」、戸隠の在来種を中心に楽しみながら散策できる「木もれ日の庭」、山野草や希少種の保護区として整備する「山野草の庭」、カモミールやラベンダーといったハーブ類やバラなど、香りをテーマにした「香りの庭」が来園者を迎える。「いつ訪れても違った表情を楽しめるよう開花時期の異なる花を植栽し、植物の高さや色合いなども考慮しながらそれらを調和させ自然に見えるようにしている」と話す。
希少植物のトガクシソウやヤマシャクヤクなども間近で観察でき、環境省や長野県版のレッドリストにも掲載されているウラギンスジヒョウモンやヒメシジミ、ヒメシロチョウなどの希少な蝶も花伝舎を訪れる。
「総合環境企業」として目指すもの
花伝舎での取り組みを進めるのは総合環境企業としての狙いがある。社員が心地よい自然を実感することは、顧客にそうした環境を提供する側として重要な経験になり、環境意識を醸成し業務にフィードバックすることでより良いサービスを創出することにつながるためだ。
また、四季折々の花木や動植物を視覚で楽しむだけでなく、鳥のさえずりを聞き、ハーブの香りやベリーの味わいに季節を感じる等、人間が持つ五感を解放し、全身で自然を楽しむことができる花伝舎は、子どもたちや地域住民が環境保全への意識を高めるきっかけを提供する場でもある。
花伝舎を活用して社内・外に対しさまざまなアプローチで環境保全の意義を伝える同社の活動は、まさに「総合環境企業」ならではの取り組みだ。